- 著者
-
秋本 美加
斉藤 功
﨑山 貴代
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.65, no.12, pp.769-776, 2018-12-15 (Released:2018-12-27)
- 参考文献数
- 19
目的 産後の母親の疲労は,身体的・精神的健康と関連があり育児困難感にも影響する。よって効果的な産後のケア実践において,母親の産後の疲労の状態を知ることは重要である。そこで本研究は,産後1か月までの母親の疲労感の変化および影響する要因を明らかにすることを目的とした。方法 A 市内の調査施設BおよびCで出産した20歳以上の母親154人を対象とし,出産後の産院入院中と1か月健診時に無記名自記式アンケート調査を行った。調査内容は,産後に受けたサポートの内容,睡眠・食事の状況,身体的ストレス状態,精神的ストレス状態,睡眠が不足した状態,育児困難感で構成される山﨑らの産後の疲労感尺度とした。この尺度は合計点が高いほど産後の疲労感が強いことを意味しており,本研究では1か月健診時と産院入院中のスコアの差を従属変数として重回帰分析を行った。有意水準は0.05とした。結果 産後の疲労感尺度の全体得点は産院入院中76.1点,1か月健診時69.7点と有意に低下した(P<0.001)。下位尺度では身体的ストレス状態と育児困難感で有意に得点が低下した(P<0.001)。産後の疲労感尺度全体およびすべての下位尺度得点には,産院入院中と1か月健診時の2時点で正の相関が認められた(P<0.001)。2時点の産後の疲労感尺度のスコアの差を従属変数とした重回帰分析により,産後の疲労感尺度全体と下位尺度の身体的ストレス状態,育児困難感において,正常からの逸脱による児の入院が抽出された。その他,産後の疲労感尺度の下位尺度において,身体的ストレス状態ではバランスのよい食事,精神的ストレス状態では出産年齢,睡眠が不足した状態では母子同室,出産前に自分の母親と同居に有意な関連があった。結論 産後の疲労感尺度全体の得点は,産院入院中と1か月健診時で比較すると有意に低下した。産後の疲労感尺度全体に対して産後1か月までの正常からの逸脱による児の入院は産後の母親の疲労感を増加させる要因であった。下位尺度では,正常からの逸脱による児の入院の他,バランスの良い食事,高齢出産,出産前に自分の母親と同居の有無,産院入院中の母子同室が影響した。産後の母親の疲労感を予測し,分娩後早期から継続して疲労回復に向けた専門的なケアを実施する必要がある。