著者
斉藤 功 青野 裕士 池辺 淑子 小澤 秀樹 山下 剛
出版者
社団法人 日本循環器管理研究協議会
雑誌
日本循環器管理研究協議会雑誌 (ISSN:09147284)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.257-265, 1998-11-10 (Released:2010-02-09)
参考文献数
21

わが国において, 1995年に国際疾病分類第10回修正 (International Classification ofDiseases : ICD-10) に基づいた死亡診断書の改正が行われた。その結果, 大きく変化した心疾患死亡統計について, 都道府県別の変化を検討した。1993年から1995年までの人口動態統計を用いて, 都道府県別, 性, 年齢階級別, 簡単分類別死亡数より, 25歳から74歳の心疾患死亡を抽出し, 直接法による都道府県別の年齢調整死亡率を算出した。心疾患はICD-9およびICD-10より, 慢性リウマチ性心疾患, 虚血性心疾患, 肺循環疾患およびその他の型の心疾患を原死因とするものと定義した。全心疾患の年齢調整死亡率は, 男女とも全都道府県において1993年から1995年にかけて減少した。男では47都道府県中, 31道府県, 女では39都道府県において, 1993年と比べて1995年には20~39%の範囲内で減少した。さらに, 今回の改正で最も影響を受けた心不全と虚血性心疾患の年齢調整死亡率の変化率を都道府県別にみると, 心不全はほぼ一様に男女とも60~79%の減少がみられた。また, 虚血性心疾患は全ての都道府県において死亡率の増加を認めたが, その変化率は都道府県別に広い分布を示していた。また, 全心疾患と心不全の年齢調整死亡率の変化率について関連をみたところ, 相関係数が男で0.596, 女で0.443と有意な正の相関を認めた。全ての都道府県において全心疾患の年齢調整死亡率は減少しており, その減少は心不全の大幅な減少によりもたらされていると考えられた。我々が実施してきた大分市心疾患死亡調査の成績と照らし合わせた場合に, この死亡率の減少は, およそ同程度のものであった。一方, 虚血性心疾患に関しては, 全都道府県において増加を示した。そして, 改正前後の変化率は各都道府県の変化率に大きな違いがあったが, 全国合計でみた場合は大分市心疾患死亡調査の推計値と近似していた。
著者
山内 加奈子 斉藤 功 加藤 匡宏 谷川 武 小林 敏生
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.537-547, 2015 (Released:2015-11-25)
参考文献数
43
被引用文献数
3

目的 地域高齢者における 5 年間の縦断的研究により主観的健康感の低下に影響を及ぼす心理・社会活動要因について明らかにすることを目的とする。方法 愛媛県東温市に在住する65歳以上の高齢者7,413人全員に「高齢者総合健康調査」を実施し,85歳以上または日常生活動作で介助を必要とする者および 5 年間における死亡・異動等を除く4,372人を追跡対象者とし,3,358人を分析対象者とした(追跡率76.8%)。主観的健康感は「普段,自分を健康だと思いますか」に 4 件法で回答を求め,さらに「非常に健康である」,「まあ健康である」を主観的健康感の健康群,「あまり健康でない」,「健康でない」を非健康群に分類した。この 2 群について,5 年間追跡することで,主観的健康感の変化およびそのパターン別の割合を検討した。次に,初回調査時における主観的健康感の健康群を対象とし,5 年後の主観的健康感が健康か非健康かを目的変数として交絡因子を調整の上,初回調査時の老研式活動能力指標,生活満足度尺度 K,認知症傾向,うつ傾向の心理・社会活動指標の各因子との関連についてロジスティック回帰分析を用いて検討した。結果 5 年間の追跡調査後に,主観的健康感の健康群は男女ともに減少した。追跡期間中に健康を維持した者の割合は,男女とも,前期高齢者では約 6 割,後期高齢者では約 4 割であった。前期高齢者においては,初回調査時の生活満足度が高いことの低いことに対する 5 年後の主観的健康感が非健康であるオッズ比は,男性で0.85(95%信頼区間:0.77-0.93),女性で0.79(95% CI: 0.72-0.87)とそれぞれ有意に低く,さらにうつ傾向有のうつ傾向無に対するオッズ比は女性でのみ1.68(95% CI: 1.11-2.56)と有意に高かった。後期高齢者においては,生活満足度が高いことの低いことに対する 5 年後の主観的健康感が非健康であるオッズ比は,男性で0.87(95% CI: 0.77-1.00),女性で0.89(95% CI: 0.80-0.99)と有意に低く,さらに老研式活動能力が高いことの低いことに対するオッズ比は,男性で0.80(95% CI: 0.70-0.91),女性で0.88(95% CI: 0.80-0.97)と有意に低かった。結論 本研究から,地域高齢者の主観的健康感の低下を防ぐためには,男女ともに生活満足感を高めることが必要と考えられた。加えて,前期高齢者の女性においてうつ傾向がないこと,および後期高齢者では,男女共に日常生活活動能力を維持することが,主観的健康感の維持のためには重要と考えられる。
著者
花見 重幸 斉藤 功 花田 晃治 高野 吉郎
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:0021454X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.211-222, 1996-06
参考文献数
52
被引用文献数
5

矯正力が三叉神経節カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)陽性ニューロンに対して, どのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的として, ラット上顎臼歯をWaldoの方法に準じて実験的に移動させ, 移動開始1, 3, 6, 12, 24時間後に屠殺して, 三叉神経節神経細胞体内CGRPの免疫活性と局在性について免疫組織化学的に検索し, 以下の結果を得た.1. 対照群において, 上顎臼歯部支配領域における全神経細胞体に占めるCGRP陽性神経細胞体の割合は約37%であり, 小型および中型の細胞体がそのほとんどを占めていた.また, 細胞体直径の小さなものほどCGRP免疫染色性が強くなる傾向にあった.2. CGRP陽性神経細胞体は, 歯の移動開始後すみやかにその数を減じ, 3時間後に最少となったが, 以後増加傾向を示し, 移動開始12時間後には対照群とほぼ同等の状態にまで回復していた.また, 全CGRP陽性神経細胞体に占めるCGRP強陽性細胞体の割合は, 歯の移動後3時間において顕著な減少を示した.以上のことから, 歯の移動により一時的に三叉神経節神経細胞体内のCGRPが減少傾向を示すことが明らかとなり, 三叉神経節内神経細胞体内に存在するCGRPが, 歯の移動に伴う疼痛の発現とともに, 歯の移動初期における歯周組織内での組織改変に深く関与している可能性が示唆された.
著者
宮崎 さおり 松本 友希 岡田 知佳 岸田 太郎 西岡 信治 三好 規子 友岡 清秀 谷川 武 斉藤 功 丸山 広達
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.93-101, 2021 (Released:2021-04-14)
参考文献数
38
被引用文献数
1

本研究では, トランス脂肪酸摂取量を推定するための食品成分表を作成することを目的とした。さらにこの成分表を用い, 実際の摂取食品についてトランス脂肪酸量を推定し得るか, 食事記録調査結果を対象に確認を行った。23文献に報告のある280食品のトランス脂肪酸量は平均値を求め, 食品成分表記載の各食品の脂質を乗じ可食部100 g当たりに含まれるトランス脂肪酸量を算出した。文献に報告のない食品の内, 312食品は置き換え法にて対応, 計592食品のトランス脂肪酸含有量を決定した。その食品成分表を用い, 糖尿病境界型の男女35名が実施した食事記録から1日平均のトランス脂肪酸摂取量を算出した。本対象集団が摂取していた可食部100 g当たりの脂質量が1 g以上の食品延べ4,539食品の内, 4,535食品 (99.9%) のトランス脂肪酸量が算出し得, 1日当たりの平均トランス脂肪酸摂取量は0.66 g (エネルギー比率: 0.33%) であった。本成分表は, 置き換え法による食品数の占める割合が高いこと等の限界に留意する必要があるものの, 多数の食品に対して数値を求めていることから, 異なる日本人集団や食事記録以外の食事調査法での応用も可能なものと考える。
著者
藤井 晶子 丸山 広達 柴 珠実 田中 久美子 小岡 亜希子 中村 五月 梶田 賢 江口 依里 友岡 清秀 谷川 武 斉藤 功 川村 良一 髙田 康徳 大澤 春彦 陶山 啓子
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.300-307, 2020-07-25 (Released:2020-09-04)
参考文献数
27
被引用文献数
1

目的:飲酒と認知症に関する海外の研究のメタ分析では,飲酒量が少量の場合には発症リスクが低く,大量の場合には高い結果が示されている.しかし,アルコール代謝や飲酒文化が異なるわが国のエビデンスは限定的である.そこで本研究では,平均飲酒量と認知症前段階の軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment,以下MCIと略)との関連について検討した.方法:2014~2017年に愛媛県東温市の地域住民に実施した疫学研究「東温スタディ」に参加した60~84歳の男性421名,女性700名を本研究の対象とした.質問調査によって飲酒頻度,酒の種類別飲酒量を把握し,1日あたりの平均飲酒量を推定した.またJapanese version of Montreal Cognitive Assessmentを実施し,26点未満をMCIと定義した.男女別に現在飲まない群に対する平均飲酒量について男性3群,女性2群に分け各群のMCIの多変量調整オッズ比(95%信頼区間)をロジスティック回帰モデルにて算出した.さらに,ビール,日本酒,焼酎(原液),ワインについては,日本酒1合相当あたりの多変量調整オッズ比(95%信頼区間)を算出した.結果:男性212名(50.4%),女性220名(31.4%)がMCIに判定された.男性では,現在飲まない群に比べて,1日平均2合以上の群のMCIの多変量調整オッズ比(95%信頼区間)は1.78(0.93~3.40,傾向性p=0.045)であったが,女性では有意な関連は認められなかった(「1合以上」群の多変量調整オッズ比:95%信頼区間=0.96:0.39~2.38,傾向性p=0.92).この関連は,高血圧者において明確に認められた.また酒の種類別の解析では,男性において焼酎(原液)については多変量調整オッズ比(95%信頼区間)が1.57(1.18~2.07)と有意に高かった.結論:男性において平均飲酒量が多いほどMCIのリスクが高い可能性が示された.この関連は高血圧者においてより明確であった.
著者
斉藤 功 山内 加奈子 山泉 雅光 加藤 匡宏
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.394-402, 2022-05-15 (Released:2022-05-24)
参考文献数
20

目的 地域集団における18.6年間の前向きコホート研究によりメタボリックシンドローム(MetS)と脳卒中罹患との関連について検討すること。方法 1996~98年の愛媛県旧O市の基本健康診査受診者4,068人(40~74歳)のうち,脳卒中の既往者を除く3,969人を対象とし,2018年12月末までの脳卒中罹患または脳卒中による死亡の有無を調べた。わが国のMetSの診断基準に基づき,ベースライン時のウエスト周囲長高値の有無と血圧高値,脂質異常,血糖高値のリスクの保有個数(0個,1個,2個以上)の組み合わせにより6群に分けた。カプラン・マイヤー法によるMetSの生存曲線の解析,ならびにCox比例ハザードモデルを用いて全脳卒中,出血性脳卒中,脳梗塞別に性年齢調整済みハザード比と人口寄与割合を算出した。結果 追跡期間中,376人の脳卒中罹患を把握した。MetSの割合は,脳卒中罹患ありの群15.2%,なしの群9.4%であり,有意な違いを認めた。ウエスト周囲長正常かつリスク0個の群を基準とした場合,全脳卒中,ならびに脳梗塞に対して,ウエスト周囲長にかかわらずリスク1個,ならびに2個以上の群で性年齢調整済みハザード比が2倍程度の有意な上昇を認めた。全脳卒中に対する人口寄与割合は,ウエスト周囲長正常かつリスク1個の群で最も高かった(18.9%)。結論 脳卒中罹患に対してMetSの寄与は大きくなかった。これまでの知見と同様,非肥満であっても血圧高値などのリスクが少なくとも1個あれば脳卒中罹患リスクは高まった。
著者
斉藤 功高
出版者
文教大学
雑誌
文教大学国際学部紀要 = Journal of the Faculty of International Studies Bunkyo University (ISSN:09173072)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.61-79, 2000-02-01

Convention of the Rights of the Child came into force in Japan on May 22 in 1994. The purpose of this paper is to examine how much influence it has had on the circumstances of children's rights before and after May 22 in 1994. First, it will examine precedents before ratification of the Convention of the Rights of the Child and circumstances of the children's rights. Though the Convention wasn't in force at that time, we can find some suits which plaintiffs submitted in accordance with the Constitution of Japan as tests for protecting their human rights. But, courts didn't adopt it because Convention wasn't ratified yet. Second, it will discuss precedents after its ratification and how the Convention of the Rights of the Child has had an influence on them. We cannot find the dierct influence of the Convention in precedents after its ratification. But, if it is possible to apply some clauses of the Convention to suits for children's rights directly, its importance will increase more and more. Even if it is impossible to apply it directly to a given situation, it is possible to apply it as a test of human rights in the Constitution.\n 子どもの権利を包括的に規定した条約として子どもの権利条約が国連で採択されたのは1989年11月20日であり、わが国が批准したのは、1994年4月22日、国内的に効力が発生したのはその年の5月22日である。 そこで、子どもの権利条約が国内的効力を持つに至った1994年5月22日を便宜的に境として、それ以前とそれ以後で子どもの人権状況に判例はどう関わってきたかを検証していく。 もちろん、子どもの権利条約は、国際人権規約の子ども版といわれるように、内容的に自由権規約25条の選挙権に関する規定を除けば、国際人権規約に規定されている47か条の実体規定をほとんど採り入れていると言われているので、国際人権規約が国内的効力を持つに至った1979年9月21日以降も同規約が子どもの人権に関する判例に影響を及ぼしていると推察できるが、ここでは、包括的な子どもの権利を直接規定した子どもの権利条約を基に国内における子どもの人権裁判状況を見ていく。 裁判における憲法と子どもの人権についての関わりは、家永教科書第2次訴訟の高裁判決(昭和50年12月19日)、いわゆる畔上判決において、憲法判断を回避して行政法レベルで処分違法を判示したように、子どもの人権裁判においても憲法判断を回避して下位規範による事案の処理の傾向があるように思われる。しかし、畔上判決が説示しているように、「具体的な争訟について裁判する場合に、法律、命令、規則等に則った判断と憲法の解釈いかんによる判断とがともに前提となる時には、まず前者の判断をなし、その判断を経たうえで、なおも具体的な争訟解決のために憲法の解釈が前提となる場合にのみ憲法解釈について判断するのが裁判所における憲法審査のあり方」であるので、真正面から憲法解釈をした判決は全体からみれば数は少ないが、憲法解釈がなされた場合については適宜示していく。また、子どもの権利条約を援用している判例内容についてはより詳細に見ていくこととする。
著者
秋本 美加 斉藤 功 﨑山 貴代
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.12, pp.769-776, 2018-12-15 (Released:2018-12-27)
参考文献数
19

目的 産後の母親の疲労は,身体的・精神的健康と関連があり育児困難感にも影響する。よって効果的な産後のケア実践において,母親の産後の疲労の状態を知ることは重要である。そこで本研究は,産後1か月までの母親の疲労感の変化および影響する要因を明らかにすることを目的とした。方法 A 市内の調査施設BおよびCで出産した20歳以上の母親154人を対象とし,出産後の産院入院中と1か月健診時に無記名自記式アンケート調査を行った。調査内容は,産後に受けたサポートの内容,睡眠・食事の状況,身体的ストレス状態,精神的ストレス状態,睡眠が不足した状態,育児困難感で構成される山﨑らの産後の疲労感尺度とした。この尺度は合計点が高いほど産後の疲労感が強いことを意味しており,本研究では1か月健診時と産院入院中のスコアの差を従属変数として重回帰分析を行った。有意水準は0.05とした。結果 産後の疲労感尺度の全体得点は産院入院中76.1点,1か月健診時69.7点と有意に低下した(P<0.001)。下位尺度では身体的ストレス状態と育児困難感で有意に得点が低下した(P<0.001)。産後の疲労感尺度全体およびすべての下位尺度得点には,産院入院中と1か月健診時の2時点で正の相関が認められた(P<0.001)。2時点の産後の疲労感尺度のスコアの差を従属変数とした重回帰分析により,産後の疲労感尺度全体と下位尺度の身体的ストレス状態,育児困難感において,正常からの逸脱による児の入院が抽出された。その他,産後の疲労感尺度の下位尺度において,身体的ストレス状態ではバランスのよい食事,精神的ストレス状態では出産年齢,睡眠が不足した状態では母子同室,出産前に自分の母親と同居に有意な関連があった。結論 産後の疲労感尺度全体の得点は,産院入院中と1か月健診時で比較すると有意に低下した。産後の疲労感尺度全体に対して産後1か月までの正常からの逸脱による児の入院は産後の母親の疲労感を増加させる要因であった。下位尺度では,正常からの逸脱による児の入院の他,バランスの良い食事,高齢出産,出産前に自分の母親と同居の有無,産院入院中の母子同室が影響した。産後の母親の疲労感を予測し,分娩後早期から継続して疲労回復に向けた専門的なケアを実施する必要がある。
著者
柿崎 真沙子 澤田 典絵 山岸 良匡 八谷 寛 斉藤 功 小久保 喜弘 磯 博康 津金 昌一郎 康永 秀生
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.179-186, 2018 (Released:2018-05-03)
参考文献数
19

目的 DPCデータを大規模なコホート研究の発症登録に利用することが可能であるかを検討するため,独自に収集した脳卒中および急性心筋梗塞発症登録数と,DPCデータを活用して得られた疾病登録数との比較を行い,脳卒中と急性心筋梗塞の各診断名において実施された治療・処置や検査から,標的疾患罹患の把握に有用な項目があるか検討した。方法 研究対象病院のDPCデータから,4種類(主傷病名,入院の契機となった病名,医療資源を最も投入した病名,医療資源を二番目に投入した病名)のいずれかに,急性心筋梗塞,脳内出血,脳梗塞が含まれる症例を抽出し,疾患ごとに実施された検査や治療の情報を抽出・集計し当該研究対象病院にてJPHC研究の一部として独自に収集した発症登録により得られた登録数を比較した。結果 DPCデータで抽出された症例数は独自に実施した発症登録数より多かったが,その差はとくに脳梗塞において顕著であった。JPHC登録数/DPC症例数の比は心筋梗塞1.13,脳内出血0.88,脳梗塞0.67であった。結論 急性心筋梗塞および脳内出血の疾病登録にはDPCデータを利用して,対象者数を概ね把握できる可能性が示された。脳梗塞についてはDPC登録病名とDPC治療・検査・診断項目を補助的に活用することで,疾病登録対象者数の同定精度を高め得る可能性がある。しかしながら,DPCデータを大規模なコホート研究の発症登録に利用するためには,地域全体での発症数がDPC導入病院の発症数でカバーできるのか,さらなる検討が必要である。
著者
北 恭成 長壁 篤史 野本 弘平 萩原 康嗣 斉藤 功一
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集
巻号頁・発行日
vol.29, pp.107-107, 2013

現在,動画配信システムは人々の日々の生活に普及しており,多くの人が楽しんでいる.しかし,従来の閲覧動画選択システムでは自分の好みにあった動画を見つけることは簡単なことではない.また,一度それを見つけると同じカテゴリの動画を選択し続ける傾向がある.その結果,様々なカテゴリから好きな動画と出会うことは難しい. 非平面型タッチパッドは,最近開発された新しい入力デバイスである.これは,平面型タッチパッドと比べユーザの直感的な意図表現を可能とする. 本研究では,非平面型タッチパッドを用い,新しい動画との偶発的な出会いを支援するシステムの提案を行い,また従来のシステムとの比較を行う.実験の結果,提案システムを用いることによりユーザは,普段見るカテゴリだけでなく今までほとんど見たことのない新しいカテゴリ内からも好みに合った動画に出会えることが明らかになった.
著者
生島 豊 畑田 清隆 斉藤 功夫 伊東 祥太 後藤 富雄
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.511-518, 1989-05-10 (Released:2009-10-21)
参考文献数
24
被引用文献数
4 4

超臨界二酸化炭素を用いて, イカ内臓中からドコサヘキサエン酸 (DHA) の選択的抽出分離を試みた.その結果, 流通系抽出装置内に硝酸銀を担持した分離チャンバーを組み入れることにより, 昇圧過程のみで何等の後処理操作を必要とせずに, 原料中に含まれていた DHA 量の約80%を濃度90重量%以上の純度で抽出分離できた.さらに超臨界二酸化炭素への各種エントレーナー添加による抽出効率への影響が検討され, ヘキサン, 酢酸エチル, アセトン系エントレーナーにより抽出効果が向上することがわかった.また溶解度パラメーターを含んだパラメーターによって, グリセライドモデル混合物だけでなく, 本試料のような天然物へのエントレーナー添加効果を相関した.
著者
斉藤 功 小林 元夫 金井 鐘秀
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

矯正治療における歯の移動に際しては、機械的外力に対して歯根膜線維芽細胞が多様な生物化学的応答を示すことが報告され、それに引き続いて生ずる破骨細胞および骨芽細胞による骨の吸収・形成に何らかの影響を及ぼしていると考えられている。本研究では、in vitroの実験系を用いて培養したヒト歯根膜線維芽細胞(HPLF)にメカニカルストレスを加え、そ培養上清が骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1細胞)にどのような影響を与えているかについて検討した。HPLFは、13-16歳の患者の小臼歯から採取した継代8-12の培養細胞を、また骨芽細胞様細胞としては、継代17-19のMC3T3-E1細胞をそれぞれ実験に用いた。メカニカルストレスは、コンフルエントになったHPLFの細胞層上にカバースリップを置き、その上にガラス製円筒をのせ1.0g/cm^2で加圧した。HPLFをそれぞれ1, 3, 6, 12, 24時間加圧した後、conditionedmediumを採取し、stressed conditionedmedium (S-CM)とした。一方、加圧実験と同様の条件で培養して加圧を行わずに採取したHPLFのconditionedmediumをnon-stressed conditionedmedium (NS-CM)とし、さらに細胞培養していないmediumをcontrol medium (CM)とした。S-CM, NS-CM, CMをそれぞれ6well dish上でコンフルエントになったMC3T3-E1細胞に添加し、24時間インキュベーションを行った後、ALPase活性およびcAMP産生量を測定した。その結果、S-CMによってMC3T3-E1細胞のALPase活性とcAMP産生量とは、NS-CM, CMを添加した場合と比較して時間依存的に有意に上昇した。このことから、S-CMはMC3T3-E1細胞の細胞分化能ならびに細胞応答性を上昇させていることが明らかとなった。また、Indomethacinを添加することで、S-CMによるMC3T3-E1細胞のALPase活性が有意に抑制されたことから、S-CMによるMC3T3-E1細胞のALPase活性の上昇にはプロスタグランディンが関与していることが示唆された。
著者
渡辺 正敏 旭 博史 石田 薫 阿部 正 近藤 宗廉 小川 将 天野 一之 斉藤 功 金 直樹 中村 隆二 西成 尚人 森 昌造
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.18, no.8, pp.1753-1757, 1985-08-01

domperidone の gastroesophageal reflux (GER) 対する治療薬剤としての評価について, 健常人18名を対象に, 食道内圧測定 (5名), テレメタリングによる24時間食道 pH 測定 (13名) を行い検討した. lower esophageal sphincter (LES) の圧と長さは domperidone 0.2mg/kg 静注にて15分後から有意の増加を示し, 60分後は最大で対照の約2倍に達した. GER に関しては, 逆流回数では domperidone 投与後に著変を認めなかった. 一方, 逆流時間では24時間中, 日中, 夜間のいずれの1時間当りの逆流時間においても対照と大差は無かったが, 投与後1時間の値では対照群に比べ著明な短縮を示した. 以上より, 本剤は LES 機能, 食道自浄作用を高めることに寄与することが示唆された.