著者
ALZATE Juliana Buritica
出版者
国際基督教大学ジェンダー研究センター
雑誌
Gender and sexuality : journal of Center for Gender Studies, ICU (ISSN:18804764)
巻号頁・発行日
no.10, pp.133-157, 2015

この論文は、フェミニスト障害学を通して、身体肯定と自己肯定の関連における相互信頼(interdependence)の問題について論じる。著者は「倫理の想像力」の概念に目を向けつつ、障害のある身体の経験に対して関心を持っており、このアプローチが、身体を恥じることから身体を肯定することへの文化的態度の変化という提案して大きく寄与することを論じる。 相互依存に対する肯定的な視点は、身体についての肯定的なイメージと自己肯定のより高い感覚を明るみに出す。相互依存の概念は次の三つのセクションで論じる。第一のセクションでは、間主観性の概念について明らかにし、身体と自己の間に生じる断裂を修復することに焦点を当てる。第二のセクションでは互恵関係とケアの概念について論じ、自立という理想に挑む。第三のセクションでは、自らの身体を肯定することおよび自尊心の観念と照らし合わせ、相互依存の概念について論じる。 相互依存は、障害者にも健常者にも影響を与えるもので、自立と自己充足の神話を解体する鍵となる語である。フェミニズムの障害学的視点からすると、我々は自由のしるしとしての自立の概念について再検討することが推奨される。相互依存は、自らの身体を肯定することと自尊心に対する一つのアプローチとして考えられる。相互依存を受け入れることは自分の弱さを受け入れることである。 身体障害者の経験から得られる重要な教訓とは、自己受容、ケア、そして他者の受容という三者の関係性や、身体は決して単独で存在しないという事実を含んでいる。つまり、相互に信頼しあうこととは、我々が関わりあう主体としての他者のことを慮るよう我々に促すものである。他者と関わりあうという行為は、団結と互恵モデルにとって決定的なものである。ゆえに、相互依存は我々を身体肯定と自己肯定に近づける。