著者
池田 揚子 天木 桂子 IKEDA Yoko AMAKI Keiko
出版者
岩手大学教育学部附属教育工学センター
雑誌
教育工学研究 (ISSN:02852128)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.89-98, 1988-03-01

衣類整理の教育課題について検討するため,消費者の家庭における衣類の取り扱いに関する意識調査を実施した。それを基に,取れにくい汚れ(しみ)の落とし方の実験も合わせて行った。意識調査はアンケートによる。対象は大学生と主婦合わせて322名である。期日は1986年7月下旬で,記入は留置法による。実験方法は,試料布として綿ブロード白布地に,付着しやすいと回答された中から多い順に8種類(醤油,ソース,油,血,ファンデーション,泥,ケチャップ,ブドウ果汁)を選んで一定量付着させた。付着経過時間は12水準(1,2,3時間,1,2,3日,1,2,3週間,1,2,3か月)とし,洗濯除去後の効果は洗浄効率から求めた。また,走査型電子顕微鏡による各種しみの繊維への付着・脱落の微視的状態の観察も行った。意識調査結果,衣類の購入はサイズ表示・価格・デザインが重視されていた。取り扱い表示マークの理解は個別には高い割合を示すが,4個について関連づけた理解は低率であった。取り扱い表示に従って洗濯する割合は男子学生は10%と低い。その他の対象者も50%程度である。洗濯経験によるトラブルは50%と高率を示している。衣類の特性と取り扱いに課題があると思われる。しみの除去効果は泥を除いて付着直後に大きい。時間経過と共に落ちにくくなり,血,醤油,果汁が顕著である。走査型顕微鏡による写真では,繊維の内部・側面への付着が明瞭で脱落した状態も判断できる。然し,定量への課題が残った。