著者
浅枝 隆 AMIRNIA SHAHRAM
出版者
埼玉大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-11-07

昨年度までに、シャジクモによる有害金属を除去することを目的に研究を行ってきており、マンガンが存在することで、ヒ素の取り込みが増加されること等を得てきた。ところが、その際に、シャジクモ自体にも大きなストレスがかかっていることが考えられ、本年度は、植物体におけるストレスの評価手法の研究に着手した。植物体に掛かるストレスに関しては、これまで光合成蛍光を用いる方法が一般的に用いられているが、これはチラコイド膜のPSIIにおける光エネルギーの吸収量を評価するものであり、必ずしも、他の組織に掛かるストレス全体を評価しているわけではない。そのため、ここでは、ストレスが負荷された際に、細胞内の様々な場所に生成される活性酸素そのものを評価することを考えた。ストレス負荷下で生成される活性酸素の多くはスパーオキシドであり、これは抗酸化酵素の働きで比較的安定な過酸化水素に変化する。そのため、過酸化水素量からストレス強度を評価することを考え、様々なストレス下で実験を行い、植物中に含まれる過酸化水素量を測定、ストレスの強度との関係を求めた。一般性を求めるために、ここでは様々な沈水植物を用いた。その結果、光ストレス、流速ストレス、有害金属ストレス、貧酸素ストレス等、様々なストレスに対し、実用的な範囲であれば、ストレス強度に対し過酸化水素量は、同一の種であれば時期等にかかわらず、ほぼ一定の増加関数で表されることが示された。また、多くの複数のストレスにおいて、全体の過酸化水素濃度は、個々のストレス強度で得られる過酸化水素濃度の和で表されることが得られた。これは過酸化水素濃度で、それぞれのストレス強度を個別に評価できる可能性を示したものであり、非常に有効な指標になる可能性が示された。