著者
佐々木 節 ANACLETOARROJA Frederico ANACLETO ARROJA Frederico
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

今年度は本研究計画のまとめとともに,これまでとは異なる視点から宇宙論的揺らぎの理論を展開し,非線形性や非ガウス性に関する考察を進めた。その主な成果を以下に記す。(1)近年のインフレーション宇宙の揺らぎの振る舞いに関する研究から,一般的な非正準的な運動項を持つスカラー場と断熱的完全流体との類似性が指摘されていたが,この点をより明確にするべく,これらの2つの場合が非線形揺らぎも含めて完全に一致するための条件を議論した。その結果,両者が非線形まで含めて完全に一致するのはいわゆる純粋なK-エッセンス理論の場合だけであることを証明した。これは,これまでの揺らぎの理論に新たな見方を提供する重要な成果であるだけでなく,これまでにあるモデルで得られた結果を対応する別のモデルに適用して直ちに解を得ることができる,という意味でも有用な成果である。(2)インフレーション理論に対するアプローチとして,最近,いわゆる有効場の理論的アプローチが注目を浴びている。しかし,これまでは単一のスカラー場の仮定のものに有効理論が展開されていた。そこで,これを複数場の場合に拡張した。特に,2階微分までの一般的有効作用の下で,複数スカラー場理論の高エネルギー極限の補正項の一般形を導出に成功した。この結果は近いうちに論文として発表予定である。(3)単一スカラー場の理論でも,ポテンシャルに急激な変化があるモデルではスローロール近似が破れることが知られている。この場合に発生する非ガウス揺らぎを解析的に評価することに成功した。この結果も近いうち論文として発表予定である。