著者
佐藤 喜一 POLPATHAPEE Sunanta PEERAVUD Sumet ANTARASENA Soontorn
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.733-739, 1990

タイ国における頭頸部悪性腫瘍の実態を, わが国の国立がんセンターの研究資料と比較し興味ある結果を得たので報告した. いずれも1985年度の調査で, タイでは総数835 例, わが国では, 1, 353例であつた. タイでは口腔癌が圧倒的に多く46.83%であり, 次いで上咽頭癌22.63%, 咽頭癌14.85%の順であつた. わが国では口腔癌が33.85%で, 喉頭癌30。38%, 上顎洞癌11.30%の順であつた. これらはX2検定で有意であつた. 罹病者は男性が女性の2倍から3倍にみられたが, わが国の男性はタイ男性に比較して1.5 倍高い罹病率であつた. 口腔癌のうち舌癌は第1位であるが, タイでは頬粘膜, 歯齦, 口唇癌が多かつた. これはタイの人々が生の煙草やbetelを好んで噛む習慣のためと考察した. 上咽頭癌がタイに多く, これに対し喉頭癌と上顎洞癌がわが国に多い点について若干の考察を加えた.