著者
荒巻 英司 アラマキ エイジ ARAMAKI Eiji
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.16, pp.281-288, 2008-03

本稿では、アマルティア・センの潜在能力アプローチが抱える問題点を指摘する。現代の厚生経済学の基礎が抱える問題点を鋭く批判し、人々の多様性に着目した新たな福祉理論の一つにセンの潜在能力アプローチがある。本稿はこの潜在能力アプローチを詳細に検討することで、その独自性と共に、問題点を浮き彫りにすることを目的としている。最初に、センがどのようにして潜在能力を定式化しているのかを詳細に考察する。次に、そこで与件として与えられている財に対する権原が、人の福祉を決定する上で本質的な役割を果たしていることを指摘する。さらに、この財に対する権原は、他者の選択から影響を受ける点でゲーム的性質を持っていることも説明する。本稿での分析の結果、センの潜在能力アプローチは個人間の戦略的相互依存性を考慮の埒外においている点で、財の所有権構造の捉え方に重大な欠陥を抱えていることが示される。