著者
山田 正 PATHIRANA ASSELA ASSELA PATHIRANA
出版者
中央大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究室で所有するドップラーレーダによる10年以上に渡る観測より,関東で発生するメソスケール現象の雷雨の多くは,関東北部及び西部の山間部で発生していることがわかっている.また,関東一円で行っている気象観測より夏期の強い日射が陸面と海面に温度差を生じさせ,それを起因として発生する海から陸へ向かう海陸風が関東北部,西部の山岳部まで進入し,地形により押し上げられることにより地形性の雷雨が発生を明らかにしている.以上のことより,地形条件と大気状態が雷雨発生に大きく寄与していることがわかっている.本研究では,地形影響の定量的評価を行う基礎的段階として,ガウス分布である単峰性の仮想地形を設定し,非静力学モデルによるメソスケール場の降雨に対する地形の影響について解析を行った.本研究では,NCAR(National Center for Atmospheric Reserch)とThe Pennsylvania State Universityにより共同開発されたメソ気象モデルThe Fifth Generation Penn Stag/NCAR Mesoscale Model(MM5)を用いてシミュレーションを行った.降雨を発生させない条件の下で,山地地形の形状及び2層の密度成層を有した大気の成層度を変化させ,山地地形の風下側に発生する重力波についての解析を行った.等流状態で重力波が発生するときは,山地の風下側で渦の発生を確認し,重力波を発生するフルード数の条件について明らかにした.実大気において海陸風の風速が夜半に現象していくように,シミュレーションにおいても水平風速を徐々に減少させた結果,山地の風下側で発生した重力波が風上側へ伝播することがわかった.降雨形成について微物理過程を導入し,仮想地形の下で地形形状,大気状態,それに起因する重力波の影響が降雨量に与える影響について解析を行った.山地標高が高くなるに従い総降雨量,降雨強度のピークは増加するが,ピークの位置は山地の風上側であり,山地の幅が広くなるに従い風下側へ片寄った降雨量分布となることがわかった.弱い水平風速では広範囲に降雨をもたらし,水平風速を徐々に減少させることにより降雨量のピークは風上側へ移動していくことがわかった。山地の風上側へ伝播した重力波による上昇流が強い対流を引き起こし,雷雨発生に関係しているものだと考えられる.