著者
松本 剛次/ハシブアン アドレアナ Adriana Hashibuan
出版者
独立行政法人国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-14, 2006-03-15

インドネシア語には、日本語の「受身」と同じものだと理解されることが多い「di-構文」というものがある。田中(1991)は両者の違いを整理し、「di-構文を自然な日本語に移すときの規則」を提示しているが、本調査はその「規則」が明示的に指導されていない状況で、インドネシア人日本語学習者はどの程度それを習得しているのか、また、規則を明示的に指導することには効果があるか、という点について予備調査的に調べたものである。その結果、学習者は単純に「インドネシア語のdi-構文」=「日本語の受身構文」というわけではない、ということは自然に分かってくるものの、「規則」の習得までがスムーズに進むというものではない、ということ、また、明示的に規則を指導した場合には、その場での効果はあるが定着はむずかしく、一方、暗示的な指導が繰り返される場合には少しずつではあるが、徐々に習得が進む可能性がある、ということが見えてきた。