著者
上野 一彦 大隅 敦子 Kazuhiko Ueno Atsuko Oosumi
出版者
国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 = The Japan Foundation Japanese-Language Education Bulletin (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.4, pp.157-167, 2008-03-17

日本語能力試験は1994年度より障害を持つ受験者に対する特別措置を開始し、2006年度は95名がこの措置を利用している。中でもLD(学習障害)等と分類される学習障害や注意欠陥・多動障害、高機能自閉症に関する措置については、原則を立てつつ試行を重ねている段階である。 一方坂根(2000)によれば、既に日本語教育の現場でもLD(学習障害)等に相当する障害を持つ学習者を受け入れており、教師は「LD学習者の対応は、学習目標、LDの程度や症状の問題など、多くの要因が複雑にからみあうため、一律の対応をするのがよいのか」と懸念しているという。 本稿ではLD(学習障害)等の中核をなすと言われる発達性ディスレクシアに焦点を当て、専門家と実施主体が連携しながら、WAIS-Ⅲをはじめとする認知・記憶特性を理解し、特性に基づいた過去の措置を踏まえて特別措置審査を行っているさまを、実際の事例とともに紹介する。