著者
朝山 邦輔 COQBLIN B. BERTHIE C. STEGLICH F. FLOUQUET J. 三宅 和正 北岡 良雄 FLOUGUET J.
出版者
大阪大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

1995年6月 朝山邦輔がオーストリア、フランス、ドイツの大学・研究所を訪問し、以下の研究テーマについて情報交換、研究成果の討論、研究打ち合せを行った。(1)ウィーン工科大学ハウザ-博士、ブラウン教授と重い電子系セリウム化合物の磁性の圧力依存性の研究。(2)グルノ-ブル原子核センターフル-ケ博士と重い電子系超伝導体ウラン化合物UPt_3,URu_2Si_2の研究(3)グルノ-ブル大学ベルティエ博士と酸化物高温超伝導体HgBa_2Ca_2Cu_3OのNMR研究(4)ダルムシュタット大学シュテ-グリッヒ教授、ガイベル博士と重い電子系超伝導CeCu_2Si_2とUpd_2Al_3,UNi_2Al_3の研究(5)ベルリン大学リューダース教授と酸化物高温超伝導HgRa_2Ca_2Cu_3O_3のNMR研究(6)パリ南大学コクブラン教授とCe化合物のT_1の理論的研究(7)キャンベル教授と高温超伝導体における渦系の運動とク-パ-対の対称性との関係同年7月北岡良雄がイタリー・トリエステにおける強相関電子系の夏の学校に出席し情報交換、討論を行った。同年9月朝山邦輔がインド・ゴアにおける強相関物理の国際会議に出席し、高温超伝導、重い電子系超伝導のNMRの結果を発表し、議論及び情報収集を行った。一方、同年9月ダルムシュタット大学ガイベル博士、10月にシュテ-グリッヒ教授を招聘し、共同研究のCeCu_2SiおよびUPd_2Al_3研究成果の交換と討論を行った。同年11月グルノ-ブル極低温研究所ルジェ博士を招聘し、重い電子系セリウム化合物について研究成果の交換を行った。1996年2月パリ南大学コクブラン教授を招聘し、重い電子系セリウム化合物の核磁気緩和時間の理論的研究について情報交換を行った。CeCu_2Si_2の基底状態は本質的には非磁性d波超伝導であり微妙なイオンの配列の乱れにより容易に超伝導が破壊され常伝導磁気秩序状態が発生する事がわかった。磁気秩序状態の性質は未定である。UPd2Al3は超伝導ギャップが線上に消失するd波超伝導でありわずかな試料の乱れや不純物により状態密度が変形し、比熱等にあたかもギャップが点状に消失しているように見せている事がわかった。UPt_3は三重項p波超伝導と結論される。これは強磁性スピンのゆらぎで媒介にした引力機構によるとかんがえられる。URu_2Si_2のク-パ-対の対称性についてはRuのNMR信号がまだ十分強くないので今後の研究に待たなければ成らない。Tc最高を与える酸化物高温超伝導体Tl_2Ba_2Ca_2Cu_3O_<10>,HgBa2Ca2Cu3O8のスピンゆらぎパラメータの測定から高温超伝導体では反強磁性的スピンゆらぎを媒介にした引力機構の可能性が非常に高くなった。軽ドープ系、重ドープ系等を含めた組織的な研究が必要である。応用上重要な渦系の運動とd波対との関係を明らかにする事が重要であり、今後のこの方面の研究も必要である。