著者
緒方 一喜 池田 高治 海野 登久子 BOCANEGRA Rodolfo Zeissig
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.47-57, 1992
被引用文献数
2

グアテマラにおけるマラリア対策のための残留噴霧法の改良のために, Anopheles albimanusの吸血・休息行動の観察を, 南部太平洋岸の一部落で2年半にわたって実施した。吸血活動の季節的ピークは, 雨期の始まり直後(6月)と終わり(11月)に現れる二山型であった。時刻的消長は, 日没3時間内にピークをもつ一山型であったが, 季節的には必ずしも一定しなかった。最初の観察時には屋外・屋内吸血性は相半ばしたが, 殺虫剤の散布開始によって屋外吸血性が高まった。屋内で吸血した個体は数時間内に大半は屋外に脱出し, 翌朝まで残るのは数%にしかすぎなかった。屋内平均滞留時間は, 無散布家屋で約30分, 殺虫剤散布家屋で10数分であった。しかし, 殺虫剤残渣面への忌避は顕著ではなく, とくにプロポクスルにはよく接触し, 大部分は屋内で死にいたった。昼間の休息場所の観察では, 常に多数発見できたのは小屋の屋根裏で, 人家内・屋外には少なかった。以上の知見を現行の残留噴霧法にからめて論じた。