著者
NOZAWA Takeshi CHEON Sang Yee
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.13-27, 2014-04-30

本研究は,Nozawa and Cheon(2012)と同様の手順で,1音節語の語末に現れる調音位置の異なる開放を伴わない閉鎖音を,アメリカ英語,韓国語,日本語の母語話者がどのように同定するかを分析したものである。資料は,アメリカ英語の母語話者が/CVC/の枠組みで,韓国語の母語話者が/CVC/,/CVCi/の枠組みで発した刺激語,日本語は/CVQCV/の枠組みで発したものから2番目の/CV/を削除した刺激音で,促音/Q/の後の子音が[p,t,k,b,d,g]となる音節を用いた。アメリカ英語の刺激音からは語末の子音(=閉鎖音)の開放部分を,/CVCi/構造をした韓国語の刺激音からは/Ci/の部分を削除した。こうして調音位置の異なる開放を伴わない閉鎖音が語末に現れる1音節の音声刺激が作られた。これらの刺激音をこの3言語の母語話者に提示し,語末の子音の同定実験を行った。実験の結果,母語の音韻による正答率への影響が見られ,各言語の話者とも母語に音素対立のある音の正答率が高かった。韓国語話者は全体的に無声閉鎖音の正答率は高かったが,有声閉鎖音の正答率は他の言語の話者に比べて低い傾向が見られた。日本語話者の正答率は,全体的に他の言語の話者よりも低く,日本語話者の正答率が最も高くなることはなかった。また,各言語の閉鎖音の音声的な違いによると思われる影響もみられ,英語話者は,韓国語の無声子音を有声音と判定する傾向があった。韓国語話者は,母語の語末閉鎖音が解放されないため,開放を伴わない閉鎖音の調音位置を聞き分けるのが最も得意であると考えられたが,実験結果からこのことを確認することはできなかった。