著者
曹 陽 高木 修 Cao Yang TAKAGI Osamu
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.3, pp.103-109, 2003

中国の出版制度においては、性的描写やポルノの書物・映像などが「精神汚染」と呼ばれ、それらを出版や販売することが一切禁止されている。ところが、そういう本や雑誌は、往々にして発禁しきれず、密かに闇のルートで販売している。日本や欧米と異なり、中国の特有な社会状況において、北京市の中学生と高校生らは、性の情報を獲得する公式ルートと非公式ルートの違いという観点から、マス・メディアの影響を検証する。そして、本研究は新しい分析方法を加えながら、学年、性別、地域の、それぞれの主効果と交互作用に着目して、新たな知見を期待する。まず、中学1年生から高校3年生までの合計6学年の1要因分散分析を行った。その結果、中学1年生は他の学年に比べて、公式ルートを通じて獲得した性の情報が最も少なく、中学生よりも高校2、3年生の方が、非公式ルートを通じて獲得した性の情報が最も多いことが明らかとなった。次に、中学校と高校を代表する中学2年生と高校2年生のデータを用いて、学校×性別×地域の3要因分散分析を行った。その結果、公式ルートを通じて獲得した性の情報は女子生徒の方が多いが、非公式ルートを通じて獲得した性の情報は男子生徒の方が多く、特に高校の男子生徒が、より一番多いことが明らかとなった。学校×地域の交互作用においては、市中心や近郊の中学生よりも遠郊の中学生の方が、非公式ルートを通じて獲得した性の情報が一層多いことが明らかとなった。上記した結果は、性的関心、性(的)行動、性に対する態度の学年、性別、地域による差の検討結果と一致するところが多く見られた。