著者
Cruz Normita de la KUMAR Ish KAUSHIK Rajendra P. KHUSH Gurdev S.
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.299-306, 1989-09-01
被引用文献数
2

米のアミロース含量,湖北温度およびゲルコンシステンシーに及ぼす登熟気温の効果を明らかにするために,5段階のアミロース含量(糠,極低,低,中および高)を代表する31品種を,IRRIのファイトトロン内4つの温度条件(21/25,29/21,33/25および37/29℃)下で生育させた.食味に関するこれら3要素の豊熟気温に対する安定性について分散分析した結果,品種効果,温度効果および品種と温度との交互作用はいずれも有意であった.また交互作用項では,回帰の品種間差(線型成分)および残差(非線型成分)が共に高い有意性を示したが,線型成分は誤差に対してだけでなく非線型成分に対しても有意であった.これは,登熟気温に対する各要素の反応が,品種によって大きな差のあることを示唆している.一般に,登熟気温の上昇に伴って,アミロース含量は低下した.全ての糯品種およびほとんどの高アミロース品種では,アミロース含量に対する品種と温度との交互作用が認められなかった.一方,アミロース含量極低,低および中の品種は,登熟気温に感応性(回帰係数のみ有意)あるいは不安定(回帰係数と残差共に有意)であった.糊化温度およびゲルコンシスチンシーについても,多くの品種では温度との交互作用が認められなかった.糯品種のIR29およびMalagkit Sungsong ならびに高アミロース品種IR42は,3要素全てについて最も安定していた.本研究の結果から食味および広域適応性の両形質に関する育種戦略を考えると,アミロース含量極低〜中レベルの品種育成については,環境効果による食味諸要素の変動が認められるので,選抜の場が重要な意味を持つことになろう.