著者
田中 雅一 DEANTONI Andrea. DE ANTONI A.
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究は「現代の京都における死に関する宗教的象徴(シンボリズム)と境界的(リミナルな)空間」を検討することである。本年度に本研究は調査上でのデータ収集と参考研究に基づき進んだ。調査上でのデータ収集は次の三点に注目した:(1)「京都怪談夜バス」観光ツアーで参与観察(7月-9月)(2)それが訪れる心霊スポットと言われている場所での調査(3)インターネットと雑誌における「心霊スポット」についての語分析とその噂の広まり方の検討(1)ツアーに参加した上で、ツアーの構築戦略に注目し、その実践と関わっている業者、ガイドさん、そして観光客に対するインタービューを行った。観光客の中でMixiの「心霊スポット」やオカルト等に関するコミュニティに参加している方々が多いと理解した上で、Mixi上でも調査とインタービューを行った。さらに同コミュニティが準備するイベントにも参加し、参与観察によるデータ収集を行った。(2)「心霊スポット」のローカルな歴史を調べた後、居住者にインタービューを行った結果、彼らの記憶とアイデンティティ構築過程、彼らの「心霊スポット」という語に対する認識を検討した。また、京都の不動産業者に対するインタービューによって、その地域のイメージと「心霊スポット」の噂における地域の経済(主に土地の値段)に対する影響を検討した。(3)専門雑誌における京都の「心霊ポット」に対する語の分析を行った。それに、専用ソフトウエアーを用い、インターネット(ウェブサイト、Wikipedia、SNS等)における「心霊スポット」の噂の構築過程・広まり方、それによって起きる抵抗を検討した。参考研究によって、観光学と人類学に注目し、上記のデータに基づき、理論的なアプローチを検討した。主に、モノの人類学という新たな理論的なアプローチに基づき、「心霊スポット」に関わる人たちの体験に注目し、それの関係性上での構築過程を分析した。