著者
冨菜 雄介 Daniel A. WAGENAAR
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.168-177, 2018-12-25 (Released:2019-01-21)
参考文献数
16

本技術ノートでは,2台の蛍光顕微鏡を上下に組み合わせて作製した両側型顕微鏡を利用することで可能となった網羅的膜電位イメージング法を紹介する。材料はチスイビル類(医用ビル; Hirudo verbana)の体節神経節である。ヒルの体節神経節はその背腹表面の2層に総計約400個のニューロンの細胞体が分布する。単離した神経節の背側と腹側に分布するニューロン群を膜電位感受性色素で染色し,この2層から同時に膜電位イメージングする手法(両側膜電位イメージング法)を適用した。また,新規な膜電位感受性色素VoltageFluorを用いることで,カルシウムイメージングでは検出の困難な閾値下脱分極性シグナルや過分極性シグナルを良好なS/N比で記録することが可能となった。今後の課題は,褪色を避けながら長時間イメージングを行うこと,セミインタクト標本において膜電位イメージングを行うこと等である。