著者
杜 林 田邊 浩 Du Lin Tanabe Hiroshi
出版者
金沢大学人間社会研究域人間科学系
雑誌
金沢大学人間科学系研究紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Sciences Kanazawa University (ISSN:18835368)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.45-65, 2018-03-31

障害者権利条約が国連において採択されて以来,障害者に対する差別の解消と障害者の権利擁護は着実に前進してきたが,そこに至るまでには,障害当事者の運動が大きな役割を果たしてきた.中国は障害者権利条約をいち早く批准したが,中国における障害当事者の活動はどのような役割を果たしたであろうか. 本論文では,中国における障害当事者の活動の展開を後づけ,障害者の権利を守るために,どのような成果を上げ,今後どのようなことが課題となるかについて検討した.最初に,障害者の運動がどのようなものであり,どのような意味を有しているのかについて述べ,イギリスとアメリカ,そして日本の障害者運動について確認した.つぎに,中国における障害者運動の展開過程を分析した.その際に,わたしたちが聞き取り調査を実施したワンプラスワンの活動に注目し,そこから中国の障害者がおかれてきた状況について考察した.それらの結果から,中国における障害者の運動がもたらした成果と今後の課題について検討した.最後に中国における障害当事者活動の特徴を指摘した.