著者
木村 元洋 武田 裕司 大平 英樹 ERICH Schroger
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

我々の脳は, 視覚的なオブジェクトの時間的文脈 (動きや変化のパターン)からルールを抽出し,そのオブジェクトが次にどのように変化するかを意図に関わらず自動的に予測している:"非意図的な時間文脈ベースの予測" 。本研究は,この非意図的な予測の脳内情報処理メカニズムを解明することを主目的とした。脳波の一種である事象関連脳電位を用いた実験を通し,この予測を反映する二種類の脳活動の同定に成功した:(1)予測された事象と実際の事象が不一致の際に生起する,視覚皮質-前頭前野に発生源をもつ視覚ミスマッチ陰性電位,および(2)予測された事象と実際の事象が一致した際に生じる,視覚皮質に発生源をもつ視覚誘発電位の増強および抑制。これらの結果は,この非意図的な予測が視覚皮質-前頭前野間の双方向性のネットワークにより達成されている可能性を示唆している。