著者
Shoko KONISHI Emi TAMAKI
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.110-124, 2016-05-31 (Released:2016-06-22)
参考文献数
28
被引用文献数
2 6

目的:本研究の目的は,日本の既婚および未婚女性における避妊使用の傾向を明らかにすること,および妊娠企図の影響を調整したうえで,避妊の使用と関連する要因を明らかにすることである.方法:2014年に実施した横断調査である,生物人口学プロジェクトにおいて,男性パートナーがいると回答した1746人の女性(うち既婚1361人,未婚385人;年齢20-44歳)の避妊使用と妊娠企図(調査時点に妊娠を希望;将来妊娠を希望;妊娠を望んでいない)について解析を実施した.結果:既婚女性の64%,未婚女性の30%は調査時点あるいは将来も妊娠を希望していなかった.しかしそのうちわずか各39%と47%の女性しか,確実な避妊法(コンドームあるいは経口避妊薬の継続的な使用)を実施していなかった.多変量ロジスティック回帰分析によると,既婚および未婚の女性の双方について,将来妊娠を希望していること(vs. 調査時点で妊娠を希望していること)および大学卒業以上の学歴(vs. 高校卒業あるいはそれ以下)は,確実な避妊法の実施と有意な正の関連を示した.既婚女性に限ってみると,妊娠を望んでいなかった女性は,調査時点で妊娠を希望していた女性と比較して確実な避妊法を実施する傾向が強かった.一方,未婚女性では同様の関連はみられず,年齢が高いほど確実な避妊法を実施する割合が小さくなる傾向がみられた.結論:調査時点で妊娠を希望していない場合でも,未婚女性,既婚女性ともに確実な避妊法を実施していない者が多かった.これらの女性がどの程度,望まない妊娠のリスクに晒されているのかについて,今後の調査研究が必要である.