著者
有山 啓之 FRANSEN Charles H. J. M. 中島 広喜
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
大阪市立自然史博物館研究報告 = Bulletin of the Osaka Museum of Natural History
巻号頁・発行日
vol.75, pp.1-14, 2021-03-31

トゲシャコ Harpiosquilla harpax (de Haan, 1844) は本邦から記載された口脚目の1種で,日本から はよく似た H. japonica Manning, 1969も記載されている.大阪湾と紀伊水道産の標本を正確に同定する ため,45個体について形態と色彩を詳細に観察した.タイプ標本との比較により今回の標本はトゲシャ コと同定され,H. japonicaは形態的特徴が合致しタイプ産地が紀伊水道に含まれることからトゲシャ コの新参異名となることが分かった.本種は顕著な突起を欠く額板と長さが幅よりも大きい尾節で特 徴付けられ,本邦以外に台湾,中国,ベトナム,ニュ-カレドニアとオーストラリアから記録されて いる.沖縄本島産のトゲシャコ属の標本を調べたところ,額板に突起を持つものが含まれ,その尾節 の長さは幅とほぼ同じであった.同様の特徴を持つ標本はインド・西太平洋の各地から記録されトゲ シャコに誤同定されてきたが,それらの中には複数種が混在する可能性があるため,沖縄本島産の種 名は決定できなかった.