著者
Fujita Minoru Harada Hiroshi
出版者
京都大学農学部附属演習林
雑誌
京都大学農学部演習林報告 = BULLETIN OF THE KYOTO UNIVERSITY FORESTS (ISSN:0368511X)
巻号頁・発行日
no.52, pp.216-220, 1980-12-25

一般に市販されているいわゆる瞬間接着剤のアロンアルファー201を用いて, 非常に簡便かつ迅速な樹脂包埋法を開発した。また通常のミクロトーム操作にも応用できる切片の"裏打ち"法を考案した。包埋法はFig 1に示すように, "(1) 乾燥した試片を試料台の上に置く。(2) アロンァルファー201を滴下して試片中に樹脂を浸透させる。(3) 余剰のアロンアルファーを濾紙で吸い取り約1時間放置する。"の手順で完了し, この包埋試片から0. 5 - 5μm厚さの切片がガラスナイフを用いて容易に切り出せる。包埋樹脂はアセトンで除去されるので, 切片は必要に応じて脱包埋できる。また切片作製後の試片をアセトンで脱包埋すると, 走査電顕観察に適した断面が得られる。この包埋法は木材はもちろん樹皮, 紙, 合板などの乾燥した多孔性の試料に適用できる。"裏打ち"法は湿潤試料に有効で, Fig 2に示すように, "(1) 試片をスラィディングミクロトームに装着し, 通常のミクロトーム操作で試料表面を平滑にする。(2) アロンアルファー201を滴下し余剰の液を濾紙で吸いとる。約1分後にはアロンアルファーは試料表面に固着する。(3) 5 - 20μm厚さの切片を切り出す。"以後 (2) (3) の操作をくり返す。切片はアロンアルファー膜で裏打ちされているので切削時の損傷が少なく, 軟弱な組織や, バラバラになりやすい組織の薄切に有効である。なお, アロンァルファーの裏打ち膜は必要に応じてアセトンで除去することができる。