著者
武内 和彦 GEETHA Mohan
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

2011年度(4月~10月)は、スリランカAnuradhapura地方とKurunegala地方において、農業気候に関する第1、2次データ収集を行った。同国はアジアでの最後の事例研究の一つである。調査は、異なった気候状況下における農家間の米の全ての品種と農家の純収益所得に主に焦点をあてた。予測される気候シナリオの下、米から得られる現在及び将来の収入を推定するため、両者共リカーディアンアプローチが用いられた。スリランカでの事例研究のデータ集計と分析を終了し、対象国タイ、インド、スリランカ3国間の比較研究を試みた。研究結果から、気候が純収入に影響を与えるのはスリランカであることが示唆された。年間平均降水量が100mm増加すると、調査対象となった全ての農地で収入が平均US$198/ha増加する。適応対策を施していない農地では、収入の増加は平均US$75/haであった。これは、農地での現行の方法が気候変動の影響を緩和していると考えられる。一方、平均気温が1℃増加すると、モデルから適応対策を行っている農地ではUS$75/ha、行っていない乾燥農地ではUS$99/ha収入が減少する。3つのモデルによると、2050年と2100年の気温と降水量の値は、両方の年で増加すると予測された。降水量に関してはCGCM3T63が2050年に増加、2100年に減少を示したものの、ECHAM50MとCSIROMk3.5では両方の年での増加が予測された。気候変動と気候の変動性に直面し、調査を行った米農家は適応対策を進めている。例えば、水及び土壌管理、アグロ・フォレストリー技術、作物管理手法、作物の多様化、新しい米品種の開発、オーガニック肥料、プランテーション、農地拡大などである。本研究の結果から、気候が収入に重大な影響を与えること、また、現在の選択肢を用い、新しい適応対策を発展させることが重要であると確認された。2011年度助成金申請時の通り、助成金はスリランカAnuradhapura地域及びKurunegala地域での現地調査に使用された。また、タイでの国内/国際ワークショップに参加し本研究の結果を発表するためにも使用された。