著者
鈴木 邦昭 Caballero Juan Alvarez Fredi FACCIOLI Maria GORETI Maria HERRERO Miguel PETRUCCELLI Miguel
出版者
The Japan Society of Veterinary Epidemiology
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.46-52, 2009

パラグアイ国における伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス対策に係るワクチン投与プログラムは,海外のワクチン製造業者により提供されたものをそのまま使用するのが一般的である。しかしながら,こうした投与プログラムは当該国における生産現場の実情ないし雛集団における母鶏由来の移行抗体保有状況に必ずしも即していない。本研究では,パラグアイ国のブロイラー鶏群に対する伝染性ファブリキウス嚢病ワクチンの至適投与時期を推定するために,当該移行抗体価の線形混合モデルへの適合を試みること,及び複数置かれた研究対象群ごとのワクチン至適投与時期の相違を比較検討することを目的とした。当該移行抗体価は,全14群,20羽ずつの雛を対象とし,それぞれ1,8,15及び30日齢時に採取した血清を用いて,ELISA法により測定した。移行抗体価の対数値を目的変数とする線形混合モデルの適合には,マルコフ連鎖モンテカルロ法を利用した確率論的推定を行った。これにより,参照群に対するワクチン至適投与時期及び他の群との当該時期(日数)の相違がそれぞれ推定された。孵化時における移行抗体価の対数値は平均12.35(95%ベイズ信用区間 : 12.16-12.53),移行抗体価の対数値についての半減期は3.7日(95%ベイズ信用区間 : 3.5-3.9)であった。調査地域で採用されている,ワクチンメーカーが推奨する抗体価125のワクチン至適投与日(8日令)よりも,本研究による推定至適投与日の方が最短でも約7日遅く,8日令での投与では残存する移行抗体によりワクチンが中和されてしまい十分な予防効果が得られない可能性が示唆された。本研究の結果は,研究対象地域における既存の伝染性ファブリキウス嚢病ワクチン投与プログラムの改善に資すると考えられる一方,各群間の当該時期の相違(最大でおよそ9日間の開き)を考慮すると,可能な限り雛の導入に際し移行抗体価を測定し,その都度ワクチン至適投与時期を推定することがより望ましいと考えられた。