著者
Harniati
出版者
新潟大学大学院現代社会文化研究科
雑誌
現代社会文化研究 (ISSN:13458485)
巻号頁・発行日
no.49, pp.137-161, 2010-12

2001年の米国における同時多発テロ以来、安全保障理事会決議に基づき各国においてテロ対策のための措置が国内においてもとられるようになってきている。インドネシアにおいてもそれは同様であり、かつインドネシア国内におけるイスラム過激派勢力によるテロ攻撃が頻発したことにより、インドネシアにおいてもテロ対策の立法が迫られるようになってきた。そのような動きに対応する形で、インドネシアにおいてもテロ対策に特化した法律が制定されてきている。しかしながら、2003年に制定されたテロ対策法はテロリズム対策や国家安全保障に大きな力点が置かれており、それにより警察や軍隊に強大な権限を付与する結果となっている。このことは、テロ対策の名の下により行われる活動に伴う人権侵害が生じた場合、被害の救済などにおいて大きな障害となり得る。また、テロ対策活動中に人命が失われるような場合において、警察などの内部における懲戒手続なども整備されておらず、権力の濫用あるいは人権保障という観点から看過し得ない問題点が存在することが明らかとなっている。本稿では、インドネシアにおけるテロ対策法の内容を概観した上で、テロ対策において特に問題となり得る「生命権(生命の恣意的な剥奪)」の観点から法律上の問題点を検討する。検討の視角として、国際人権法における生命権に関する議論状況を概観し、その規範内容及び国家の義務を明らかにすることにより、インドネシアにおける立法の改善のためにどのような点が考慮されるべきかを検討する材料としたい。