著者
鳥山 平三 Heizo TORIYAMA
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.9, pp.87-98, 2010-01-31

老年期の心の在り方について,限られたものではあるが,民話や童話等に登場する主人公の行 動に糸口を見出そうとした。老人たちの肯定的な行為や否定的な振る舞いに様々な教訓を得ることが できた。賢明で正直で優しい老人は福を授かり,その逆に愚かで邪悪で冷酷な老人は罰を受けるので ある。当然のことではあるが,老いても悲しい性(さが〉の老人たちも多い,老醜よりも人生の終罵 は美しくありたいものである。脳は生涯発達するのである。神経回路を豊かに増殖させ,活用させる 方策を老年心理学は探究すべきである。
著者
鳥山 平三 Heizo TORIYAMA
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.8, pp.125-142, 2009-01-31

我が国の臨床心理学界の第一人者で,長く斯界(しかい)の先頭に立って導いて来られた河合 隼雄先生が亡くなった。先生は 20 世紀最後の「老賢者」の一人と言ってもよい。筆者は,先生に特に 近い存在ではなかったが,それでも 40 年に及ぶ浅からぬ交流があった。その出会し、から,折々のエピ ソードを追想することにより,河合先生を偲ぶよすがとしたく思う。筆者の個人的な臨床心理学研鐙 の経験の織りなす,河合先生の周囲の人との交流の中に,河合先生を慕う女性と男性のさまざまな人 間模様が興味深く観察された。そこで,河合先生もよく触れておられたユング心理学の「元型」の中 でも,現代における「老賢者」の失墜(しつつしリ,そして,否定的な意味での「太母」の篭絡(ろう らく)について,見解を述べたく思う。時代は「老賢者」の英知から「太母」の呪縛へと移り行く現 代である。