著者
岡田 恒男 KARADOGAN Fa 林 正司 大和田 義正 ILKI Alper YUKSEL Ercan
出版者
芝浦工業大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

トルコ共和国のイスタンブールは、急速な近代化と工業化により都市が膨れ上がり、建築の構造上も大きな問題を抱えているが、また、この大都市は、地震活動が活発な小アジア半島に位置している。トルコでは,近代的な鉄筋コンクリート建物のほとんどは、耐震壁はなく、外壁や間仕切り壁は、中空煉瓦積みのモルタル仕上げである。我々は、建物の動的な特性を知る目的で,イスタンブール市内で工事中のフレームのみを含み10棟以上のRC建物について常時微動測定を行った。また、最近の地震により被害を受けたディナールとアダナ地域でも同様の測定を行った。また、これらの建物のいくつかについては、建物の強度や靭性を知るために耐震診断法による検討を行った。さらに、1995年のディナール地震と1998年のアダナ・ジェイハン地震の被災地の建物調査も行った。この研究の結果、以下の知見が得られた。1) トルコの建物の剛性は、中空煉瓦+モルタル仕上げのものと、その前のフレームのみの場合では、大幅に値が異なる。2) 地震により被害を受けた建物の固有周期は,無被害のそれと比較して非常に長い。3) 一般にRC建物の靭性は、日本のそれに比較して非常に乏しい。4) 一般的にコンクリートの強度は非常に低い。5) 補強筋配筋技術は、その技術的な意味を知らないため、レベルが低い。6) 中空煉瓦壁は非常にもろく、軸力は支えられず、柱の破壊に対して、何の冗長度もない。今後予期される大地震に対して、我々は速やかに、設計方法、建設技術、強度、靭性などを改善するべきと強く感じている。