著者
IZUMO Takeshi (2009) SWADHIN K.Behera (2008) IZUMO Takeshi
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究では、観測データ(現場観測データ、衛星観測データ、再解析データ)や様々な階層の数値モデル(浅水モデルから高解像度大気海洋結合モデルまで)の結果の解析により、インド洋・太平洋熱帯域の気候変動の理解を進め、地域的な気候変動の予報精度(特に降水の季節内変動から十年スケール変動の予報精度)の向上を目指した。このような予報は、インド、アジア、アフリカ・モンスーンの影響を受ける発展途上国の人々にとって、重要である。当該年度の研究では、特に、エルニーニョ/南方振動とダイポールモード現象の関係について画期的な研究成果が得られた。エルニーニョ/南方振動には、太平洋熱帯域が暖かいエルニーニョの状態と冷たいラニーニャの状態が、不規則に存在し、世界各地の社会経済活動や環境に大きな影響を与える。しかしながら、エルニーニョ/南方振動を予報することは、いまだに困難である。一方、インド洋にも経年変動するダイポールモード現象が存在し、西インド洋熱帯域が暖かくなり、東インド洋熱帯域が冷たくなる現象を正のダイポールモード現象と呼ぶ。本研究では、負(正)のダイポールモード現象は、エルニーニョ(ラニーニャ)の14ヶ月前の良い予報になることを初めて示した。そして、ダイポールモード現象は、秋季のウォーカー循環を強化するが、11月から12月にかけて急速に減衰することにより、太平洋の東西風偏差を急に衰弱させるため、エルニーニョ/ラニーニャを発達させることが明らかとなった。