著者
J クスマノ
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、大学の授業にヨガを導入することの先駆的な試みとして、その精神生理学的な効果と被験者(学生)の主観的な反応を調べることを目的とした。被験者は本学心理学専攻学生53名(男子13名、女子40名)であり、全員が必修科目の中でヨガを体験した。手続きは、脈拍と血圧についてヨガ実施前に3回のベースラインを測定した後、ヨガ実行中および終了後に合計3回の測定を行った。また、ヨガ終了後はその時点での気分とリラックスの度合いを評定させた。ハタヨガの実施時間は約1時間15分であった。その結果、ヨガ実施前と実施後の脈拍の平均値をt検定で比較したところ、有意にヨガ実施後の低下が見とめられた。血圧や、各変数間の相関では有意な結果は得られなかった。このことより、授業という状況の中でヨガを実行することによる身体的な効果はある程度認められたと考えることができる。これは、ほとんどが初心者で、しかもヨガに対する動機づけが必ずしも高くないという状況であっても、ヨガによる変化を体験することができることを示している。但し、授業の中での実践はあくまでヨガの紹介やきっかけ作りという側面が強いため、本研究を踏まえて、今後はより継続的な実践のための長期的なプログラムを検討していく必要があると思われる。
著者
J クスマノ
出版者
上智大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本研究は、被験者によるヨガ介入の効力知覚、ならびにそれによるセルフ・エフィカシィ知覚に対して、生理学的な指標の即時フィードバックが影響を及ぼすか否かを明らかにするために計画された。仮説として提起したのは、ヨガ介入が効果的と把握されればされるほど、被験者が自発的にヨガをやる確率が高くなり、しかもヨガを継続的に実行するようになり、継続することによって望ましい効果が得られるというものである。ヨガの指導を受けてから、実際に何人の被験者がその後も継続したかをフォローアップで調査しなかったために、本研究では直接に応諾の問題には対処しなかった。むしろ本研究では、介入の効力知覚を高めることをねらったフィードバックの使用に焦点を当てた。換言すれば、本研究で直接扱うのは、ヨガ介入の効力知覚を高める手段としてのフィードバックである。ヨガ介入の効力を測定するために、今回はリラクセーション達成率を調べた。前記の仮説をより大きな準拠枠に当てはめてみると、実際に本人が遂行した介入に対する効力知覚が大きければ大きくなるほど、セルフ・エフィカシィは高まる。そして、セルフ・エフィカシィ知覚が高くなればなるほど、応諾率も上昇すると推測される。62人の学部生を被験者としてヨガによるリラクセーションのセッションを行い、リラクセーション達成率を測定した。被験者は、実験群とコントロール群の2つのグループに分けられた。実験群では、介入前後に血圧と脈拍数を測定し、その数値を提示した。コントロール群には、同数値のフィードバックを与えなかった。その結果、この2つのグループ間でリラクセーション達成率に有意差は示されなかった。しかし、両グループにおいて、男性に比べて女性の方が自分の達成率を有意に高く評価した。