著者
近藤 克則 JAGESプロジェクト
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.5-20, 2014-04-25 (Released:2014-05-12)
参考文献数
41
被引用文献数
4 1

「健康日本21(第2次)」で,「健康格差の縮小」とソーシャル・キャピタル(地域のつながり)など「社会環境の質の向上」が明示され,介護予防でも地域診断に基づく地域づくりへの重視が謳われるようになった。しかし欧米に比べ我が国ではそれらに必要な「見える化」が遅れている。これらの課題に取り組むため厚生労働科学研究費補助金などで組織されたJAGES(Japan Gerontological Evaluation Study,日本老年学的評価研究)プロジェクトの取り組みを紹介し「見える化」の可能性と課題を考察することが小論の目的である。本研究プロジェクトでは,まず先行研究レビューに基づきベンチマークの必要性や限界・課題,政策評価ベンチマーク指標群の枠組みと指標選択基準,要介護リスクと保護要因などについてまとめた。次に全国31市町村との共同研究により,要介護認定を受けていない10万人超の高齢者のデータベースを構築して指標群を作成し,保険者にフィードバックするベンチマーク・システムを開発した。さらに縦断研究で解明されたリスク要因や保護的要因,応用研究としての介入研究などに基づく指標群の妥当性の検証などを行った。考察では,行政と研究者の共同の仕組みやデータベース,ベンチマーク・システム開発の多面的な意義と,ベンチマーク指標の妥当性の検証など今後の課題について述べた。健康格差と健康の社会的決定要因の「見える化」による効果的・効率的・公正な介護政策のために総合的なベンチマーク・システムのプロトタイプを開発し,社会保障領域における大規模データ活用の可能性と課題を考察した。