著者
佐藤 純子 Junko SATOH 淑徳大学短期大学部こども学科 Shukutoku University Junior College
出版者
淑徳大学短期大学部紀要委員会
雑誌
淑徳短期大学研究紀要 = Bulletin of Junior College of Shukutoku (ISSN:02886758)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.63-80, 2015-02-25

ラーニング・ストーリーとは、ニュージーランドの多くの教育や保育現場において用いられている観察記録の一つの方法である。本研究では、C保育園(後に対象児は、P保育園に転園。P保育園においても調査を継続)において、当時4歳児であったリリコの2年間を観察した。具体的には、K保育士にラーニング・ストーリーの手法に基づいた観察記録を蓄積してもらい、定期的に園全体で振り返る機会を設けた。そして、1 その記録をニュージーランドの幼児教育カリキュラムである「テ・ファリキ」と日本の「保育所保育指針」の双方と照合することによって保育士自身の保育観に影響や変化をもたらすのか、2 観察記録で得られた成果を次の日からの保育実践に活かすことにより、子どもの発達に効果が表れるのかを分析した。ラーニング・ストーリーに記されたリリコの活動を「テ・ファリキ」と照合した結果、保育者に対しては、「保育を客観的に観る力」と「子どもの内なる声を聴く力」を養成していたことが明確となった。また、対象児の発達面でも変化が見られ、とりわけ社会性と表現能力の両面が育まれていた。