著者
木下(小室) 友香理 門倉 利守 数岡 孝幸 穂坂 賢 中田 久保 KOMURO Yukari KINOSHITA KADOKURA Toshimori KAZUOKA Takayuki HOSAKA Masaru NAKATA Hisayasu 東京農業大学短期大学部醸造学科 東京農業大学応用生物科学部醸造科学科 東京農業大学短期大学部醸造学科 東京農業大学短期大学部醸造学科 東京農業大学短期大学部醸造学科 Department of Brewing and Fermentation Junior College of Tokyo University of Agriculture Department of Fermentation Science Faculty of Applied Bio-Science Tokyo University of Agriculture Department of Brewing and Fermentation Junior College of Tokyo University of Agriculture Department of Brewing and Fermentation Junior College of Tokyo University of Agriculture Department of Brewing and Fermentation Junior College of Tokyo University of Agriculture
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.100-106,

花から分離した酵母(以下,花酵母)の分類学的性質を調べる目的で,生理学的試験と染色体DNA電気泳動を行った。また,各花酵母の醸造特性を知るため,清酒小仕込み試験を行ない,製成酒の一般成分と香気成分分析を行った。その結果,花酵母13株は,清酒酵母K-9株と同様に,メレジトースおよび硝酸塩を資化せず,クエン酸塩無添加のビタミン欠培地で増殖し,イーストサイジンに対する抵抗性を有した。TTC染色は赤色,アルシアンブルー染色は白色~淡青色であった。染色体DNA電気泳動パターンは,第VI染色体が長く,第III染色体と接近した清酒酵母K-9株と同じ泳動パターンを示した。また,高泡形成試験では全株が高泡を形成しなかったことより,花酵母13株は高泡を形成しない清酒酵母タイプであった。清酒小仕込み試験の結果,花酵母はカプロン酸エチル生成タイプ(ND-4株,AB-2株),酢酸イソアミル生成タイプ(BK-1株,MR-4株,SN-3株,GE-1株,KAF-2株,KS-3株,ST-4株,SUNF-5株),双方をバランスよく生成するタイプ(HNG-5株,NI-2株,CAR-1株)に大別できた。また,有機酸組成分析の結果,前報4)のAB-2株,KS-3株,MR-4株に加え,CAR-1株,GE-1株,KAF-2株,ST-4株,SUNF-5株による製成酒はリンゴ酸含有量が高いことが明らかとなった。花酵母による製成酒は吟醸香成分であるカプロン酸エチルおよび酢酸イソアミル生成量が多く,リンゴ酸の割合が高い有機酸組成を持つことから,多様化する消費者嗜好に対応する清酒開発を可能にすると思われる。