著者
藤田 祐二 KOO Kong-Khen ANGOLA Juan Carlos 井上 隆 酒井 哲也
出版者
The Society of Polymer Science, Japan
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.119-131, 1986
被引用文献数
1 20

延性高分子とぜい (脆) 性高分子とからなる耐衝撃性プラスチックの設計は, 近年, ポリカーボネートとスチレン-アクリロニトリル共重合体などの混合系において見いだされた新しい概念である. この多相系プラスチックにおいては, 分散相としてのぜい性高分子の存在により延性高分子の剛性とじん (靱) 性を同時に向上させることが可能であり, 実用面からの興味も大である. 本報では同様な強化機構を持つ他の新しい多相系を見いだすため, 種々の延性高分子とぜい性高分子の組合せについて, それらの力学物性評価を行った. また, 多相構造の電子頭微鏡観察や変形時の応力解析を行い, 強化機構について考察した. その結果, ポリカーボネート/ポリメタクリル酸メチル系など新たに6種類の強化系を見いだし, この現象がかなり一般性のあることを明らかにした. また, これらの強化系においては, ぜい性高分子の分散相が変形時に冷延伸され, これによって強化が発現することを確認した. さらに, 修正Eshelby理論をもとにした応力解析より, ぜい性高分子の冷延伸の成否はMisesの降伏条件式によって記述しうることが判明した. 以上より, 成分高分子のヤング率, ポアソン比などの材料定数より強化の成否を半定量的に予測する可能性が示唆された.