- 著者
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西 栄二郎
KUPRIYA-NOVA E.
KUPRIYANOVA E.
- 出版者
- 横浜国立大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2008
オーストラリア産多毛類と日本産多毛類を中心とする底生生物の生物相を比較しながら、外来種の調査を行った。オーストラリア沿岸の付着生物(カキやイガイなど)の隙間に棲む多くの種類が外来種の可能性があることが確認できた。また、オーストラリア産、日本産、米国西海岸産の数種の比較で、外来種ではなく、それぞれ別個の種である可能性があることがわかった。今後、これらの外来種なのか別個の種なのか判明していない種の起源や移入・伝播経路等をDNA解析により明らかにしていく予定である。また、海洋研究開発機構との共同研究により、深海産の多毛類について新記録種が見つかった。この種はDNA解析により既知種との類縁性が考えられるものの、剛毛などの外部形態に差異があることから新種(未記載種)の可能性がある。今回は採集された個体数が少なく、外部形態の差異が変異なのか固定形質なのか判別できないため、新種または既知種との判断は行っていない。今後の調査により同種が採集された場合には種の位置付けが確定されると思われる。横浜港など東京湾内や相模湾内の底生生物調査とともに、淡水産生物の調査も行った。淡水には特異な進化を遂げた種が分布し、その分布域に外来種が入り込むことで、多くの淡水産種が分布を狭めたり、絶命に瀕する例が知られている。そのため、淡水産の種とそれに影響を及ぼす可能性がある種を調査・研究することを目的とした。欧州の洞窟に棲む種やタイの淡水・汽水に棲むカンザシゴカイ科、日本の洞窟内淡水に生息するホラアナゴカイ科などを調べた。それぞれ現在も良好な分布が確認されたが、今後もモニタリングすることにより、その分布域の減少に注視する必要があると思われる。