著者
Kai Noriyuki
出版者
茨城大学
雑誌
五浦論叢 : 茨城大学五浦美術文化研究所紀要
巻号頁・発行日
vol.12, pp.A23-A28, 2005-11-30

フィレンツェ近郊スカンディッチのサン・ジュスト・ア・シニャーノ聖堂身廊右壁に現存する板絵≪磔刑のキリストとマグダラのマリア≫(図1)は、サンティ・ディ・ティート(1536-1603年)作聖トマス・アクイナス礼拝堂祭壇画(図2)に登場する磔刑像を原型とし、その後の画家のさまざまな磔刑図(図3,4)とも類似している。但し両肩や両腕に比して小さなキリストの頭部などには、助手の不十分な技量が見てとれる。ここでは本作を画家の工房作とみなし、図版を初公表する。作品の来歴は不明だが、マグダラのマリアがそうであったように、回心した「罪の女」たちの収容施設等の出自を推測することができる。