著者
小原 克博 Katsuhiro Kohara
出版者
基督教研究会
雑誌
基督教研究 = Kirisutokyo Kenkyu (Studies in Christianity) (ISSN:03873080)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.23-44, 2007-12-12

宗教の神学あるいは宗教間対話において広く用いられてきた類型に、排他主義、包括主義、多元主義がある。宗教多元主義の立場からは、しばしば、排他主義や包括主義は克服されるべき前時代的なモデルとして批判されてきた。本稿では、このような宗教多元主義モデルが前提としている進歩史的な価値観を「優越的置換主義」として批判すると共に、その問題は現実の宗教界や政治の世界などにおいても反映されていることを、西洋および日本における事例を通じて考察する。その上で、排他主義や包括主義に分類される宗教や運動の中にも、評価すべき要素があることを指摘する。また、これまでもっぱら西洋の神学サークルの中で議論されてきた多元主義モデルが、非西洋世界において、どのような有効性を持つのかを、イスラームや日本宗教の視点を適宜織り交ぜながら、批判的に検討する。最後に、西洋的価値を中心とする宗教多元主義を積極的に相対化していくためには、宗教の神学と文脈化神学を総合する必要があることを示唆する。
著者
小原 克博 Katsuhiro Kohara
出版者
基督教研究会
雑誌
基督教研究 = Kirisutokyo Kenkyu (Studies in Christianity) (ISSN:03873080)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.14-32, 2002-07-29

本論文では、基督教史の中で現れてきた、戦争をめぐる三つの類型、すなわち、絶対平和主義、正戦論、聖教論の間に生じる緊張関係を解釈し、また、それらが歴史的にどのように受容されてきたのかを考察する。平和を実現するために自らが信じる正義を実行するという考えはキリスト教社会においても、イスラーム社会においても同様に見られる。現実には両者の正義はしばしば衝突してきたが、キリスト教の伝統的な正戦論の中では他の宗教の正義の問題はほとんど扱われてこなかった。本論文では、そうした課題に応えるために比較宗教倫理学的視点を導入する。