著者
新井 克弥 Katsuya ARAI
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-12, 2007-03-20

80年代、分衆/少集論を中心に展開した消費社会論は現代思想、マーケティング、社会学等様々な分野で議論と対象となり、その間続いたバブル景気の理論的な援護射撃を演じた。だがバブル崩壊とともに、その有効性は失われ、これら議論が展開されたこと事態がすでに過去のこととなっている。そこで、本論ではこのような消費社会論がなぜ発生したのか、そして、どのような変容を遂げ今日に至っているのかをボードリヤール理論の受容過程を辿ることで明らかにすると同時に、現代人のコミュニケーション行動との関連での今日的な有効性について考察する。
著者
新井 克弥 Katsuya ARAI
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-15, 2004-03-20

大平健著『やさしさの精神病理』(岩波新書、95)のテクスト・クリティーク。精神科医、大平は、患者との対応の中から、70年代以降、新しい意味を持ったやさしさ=ヤサシサが出現したと指摘する。70年代、やさしさはモノや人個々の性質をあらわす用語から、他者との連帯を志向することばとなったのである。当初、それは、ことばを介した他者介入型の「やさしさ」として出現するが、80年代に入り、”沈黙”を原則とする相互非介入型の”やさしさ”へと転じていく。すなわち、相手の気持ちを察し、相手と同じ気持ちになってメッセージを共有するスタイルから、相手の領域に入り込まないように気づかい、空間を共有するスタイルへの変容である。本稿ではこのような大平の指摘する新しい”やさしさ”を、情報化社会・グローバル化社会におけるコミュニケーションの新しいスタイルと捉え、その可能性について、中野収のカプセル人間論、およびN.ルーマンのダブル・コンティンジェンシー理論を援用しながら考察。その社会的適応性を評価し、解り合えないことを了解し合うコミュニケーション、および共鳴・共振だけで結ばれるコミュニケーションの重要性を説いた。