著者
末盛 慶 Kei Suemori
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal of social welfare, Nihon Fukushi University
巻号頁・発行日
vol.128, pp.35-50, 2013-03-31

本研究では, 性別役割分担がどのように変動していくのかを明らかにすることを問題意識としながら, 夫婦間交渉に関わる測定概念─クレイム行為─を設定した. クレイム行為とは, 夫婦・パートナー間で, 自分が要望することを相手に伝える行為のことである. 本研究では, 夫婦間のクレイム行為のうち, 妻が夫に家事や育児などをするように要求するクレイム行為に注目し, こうした行為がどのような要因によって促進されるのかを計量的に明らかにすることを目的とした. 分析対象は, 1 歳~3 歳児がおり, 愛知県在住で, 父母が同居し, 雇用者であり, かつ育児休業を取得していない夫とその妻 421 組である. 分析の結果, 妻の学歴が高いほど, 妻の父親子育て優先意識が高いほど, 夫の性別役割意識が伝統的であるほど, 妻のクレイム行為が発生しやすいことが示された. 以上の結果から, 妻から夫へのクレイム行為は, 妻の学歴の高まり, ジェンダー意識の平等化, そして夫の役割分担度の低さによって促進されることが示唆された.