著者
末盛 慶
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.128, pp.35-50, 2013-03-31

本研究では, 性別役割分担がどのように変動していくのかを明らかにすることを問題意識としながら, 夫婦間交渉に関わる測定概念─クレイム行為─を設定した. クレイム行為とは, 夫婦・パートナー間で, 自分が要望することを相手に伝える行為のことである. 本研究では, 夫婦間のクレイム行為のうち, 妻が夫に家事や育児などをするように要求するクレイム行為に注目し, こうした行為がどのような要因によって促進されるのかを計量的に明らかにすることを目的とした. 分析対象は, 1 歳〜3 歳児がおり, 愛知県在住で, 父母が同居し, 雇用者であり, かつ育児休業を取得していない夫とその妻 421 組である. 分析の結果, 妻の学歴が高いほど, 妻の父親子育て優先意識が高いほど, 夫の性別役割意識が伝統的であるほど, 妻のクレイム行為が発生しやすいことが示された. 以上の結果から, 妻から夫へのクレイム行為は, 妻の学歴の高まり, ジェンダー意識の平等化, そして夫の役割分担度の低さによって促進されることが示唆された.
著者
末盛 慶
出版者
日本福祉大学福祉社会開発研究所
雑誌
現代と文化 : 日本福祉大学研究紀要 = Journal of Culture in our Time (ISSN:13451758)
巻号頁・発行日
vol.136, pp.153-167, 2017-09-30

本稿の目的は,日々の状況に対して人々はどのような対応をしているのかに関する社会学的かつ経験的研究の中で活用しやすい概念を提示することである.具体的には,生活戦略という概念を示す.この目的の準備作業として,生活戦略と関連が想定される先行概念を検討した.具体的には,①心理学における対処概念,②家族ストレス論における対処概念,③家族戦略,④ライフコース論におけるヒューマン・エージェンシーを検討した.その結果,日々の状況に対する個人の行為に焦点を定め,実証研究の中で使用できる社会学的な概念は十分にたてられていないことが示唆された. 本論文で提案する生活戦略は近年の社会学理論を理論的な基盤とする.生活戦略の特徴としては,個人がとる行為は個人の裁量を含みつつも社会構造に規定されていること,生活戦略が社会構造の再生産や変動にも寄与すること,攪乱的な行為も肯定的に評価することなどがある.生活戦略を用いた研究例もいくつか示した.
著者
末盛 慶 小平 英志 鈴木 佳代
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.39-52, 2017-09-30

近年,ワーク・ライフ・バランスに関する研究が蓄積されている.しかし,その多くは共働き世帯など夫婦世帯を対象とした研究が多い.しかし,ワーク・ライフ・バランスの実現がより困難であることが推測されるのはひとり親家庭である.ひとり親家庭の場合,理論的に1 人で家庭役割や職業役割等を遂行していく必要があるからである. 以上の問題意識から,本稿では,シングルマザーの家庭領域から仕事領域に対するワーク・ファミリー・コンフリクト(FWC)の規定要因を分析した.分析対象は,名古屋市区部に在住し,年齢の記入があり,就業しているひとり親の母親113 名である. 分析の結果,時間のFWC に関しては,仕事過重と貧困状態が有意な関連を示した.ストレインのFWC に関しては,仕事過重,上司のサポート,および貧困状態が有意な関連を示した.行動価値のFWC に関しては,学校関与と上司のサポートが有意な関連,貧困状態は有意傾向で関連を示した.以上の結果から,仕事の過剰や上司のサポートといった要因に加え,貧困状態がシングルマザーのワーク・ファミリー・コンフリクトを高めることが示された.
著者
末盛 慶 Kei Suemori
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal of social welfare, Nihon Fukushi University
巻号頁・発行日
vol.128, pp.35-50, 2013-03-31

本研究では, 性別役割分担がどのように変動していくのかを明らかにすることを問題意識としながら, 夫婦間交渉に関わる測定概念─クレイム行為─を設定した. クレイム行為とは, 夫婦・パートナー間で, 自分が要望することを相手に伝える行為のことである. 本研究では, 夫婦間のクレイム行為のうち, 妻が夫に家事や育児などをするように要求するクレイム行為に注目し, こうした行為がどのような要因によって促進されるのかを計量的に明らかにすることを目的とした. 分析対象は, 1 歳~3 歳児がおり, 愛知県在住で, 父母が同居し, 雇用者であり, かつ育児休業を取得していない夫とその妻 421 組である. 分析の結果, 妻の学歴が高いほど, 妻の父親子育て優先意識が高いほど, 夫の性別役割意識が伝統的であるほど, 妻のクレイム行為が発生しやすいことが示された. 以上の結果から, 妻から夫へのクレイム行為は, 妻の学歴の高まり, ジェンダー意識の平等化, そして夫の役割分担度の低さによって促進されることが示唆された.
著者
末盛 慶
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.103-112, 2002
被引用文献数
1 or 4

本研究では, 母親の就業が子どもに与える影響に関する諸理論と先行研究を概観した上で, 母親の就業が子どもの独立心にどのような影響を持つのかを実証的に明らかにする。本研究では, 母親の就業状態だけでなく母親の職業経歴の効果も検証し, また社会階層や母子関係を統制した上で母親の就業の効果を検証する。分析対象は, 東京都郊外地区から多段無作為抽出法でとられた長子の中学生とその母親451組である。分析の結果, 母親の就業状態によって子どもの独立心に違いはみられなかった。しかし, 母親の職業経歴によって子どもの独立心に有意な差異が生じていた。結果は, 就業継続する母親の子どもの独立心が他の群に比べ有意に高いことが示された。ここから, 母親の就業状態だけでなく母親の職業経歴を捉えることの重要性, および母親の就業継続が必ずしも子どもに対して否定的な影響を及ぼさない-むしろポジティブな影響さえ及ぼしうる-ことが明らかになった。
著者
近藤 克則 吉井 清子 末盛 慶 竹田 徳則 村田 千代栄 遠藤 秀紀 尾島 俊之 平井 寛 斉藤 嘉孝 中出 美代 松田 亮三 相田 潤
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

本研究の目的は,介護予防に向けて,心理的因子や社会経済的因子の影響を明らかにする社会疫学の重要性を検討することである.(1)理論研究では,多くの文献をもとに社会疫学の重要性を検討した.(2)大規模調査(回収数39,765,回収率60.8%)を実施した.(3)横断分析では,健診や医療受診,うつなどと,社会経済的因子の関連が見られること,(4)コホート(追跡)研究では,社会経済的因子が,認知症発症や要介護認定,死亡の予測因子であることを明らかにした.本研究により,社会疫学研究が,介護予防においても重要であることを明らかにした.