著者
青木 聖久 Kiyohisa Aoki
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal of social welfare, Nihon Fukushi University
巻号頁・発行日
vol.133, pp.47-73, 2015-09-30

精神障害を有する本人(以下,本人)が暮らしを営むにあたって,障害年金を継続して受給するのは大切なことだといえる.ところが,就労したことによって,障害等級の級落ち(以下,級落ち)や支給停止になれば,暮らしに大きな影響を受けることになる.これらの状況をふまえ,本稿では,実際,障害年金が級落ちや支給停止になっている,あるいは,その可能性が高い状況にある本人の実態及びその後の相談体制,さらには,本人や家族が,障害年金や就労をどのように捉えているかを明らかにした.その結果,障害年金が級落ちや支給停止になっている者は6.7%いることがわかった.一方で,殆どの本人や家族が障害年金の意義を認めていた.また,就労についても,多くの本人や家族がその意義を認めていたものの,再発を危惧したり,障害年金の支給停止を気にしていることがわかった.そのため,就労に対して,ためらっているような意見も多く見られた.本稿では,生活支援に携わる者(以下,生活支援者)が,これらの複雑な想いを理解したうえで,本人や家族への直接的支援と共に,障害年金が使いやすい社会資源として位置付くように,社会へ働きかける等の間接的支援の取り組みが重要であるということを示した.
著者
湯原 悦子 Etsuko Yuhara
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal of social welfare, Nihon Fukushi University
巻号頁・発行日
vol.125, pp.41-65, 2011-09-30

日本では 2006 年度以降, 厚生労働省により高齢者の 「虐待等による死亡例」 が調査されるようになった. 警察庁も 2007 年以降, 犯罪の直接の動機・原因が 「介護・看病疲れ」 の事件数を公表している. 2000 年に介護保険が導入されて以降, 介護サービスの充実が目指されているが, これらの調査によれば, 親族による, 介護をめぐって発生した高齢者の殺害や心中の事件が顕著に減少したという傾向は見られない.このような事件を防止するためには, 介護される者に加え, 介護する者へも支援を行うこと, 特に介護者のうつを早期に発見し必要な支援を行えるようにすること, BPSD への対応について具体的なアドバイスを行うことが必要である.また, 介護を引き受けたからといって社会から孤立することなく, 大切な人々との絆を大切にしつつ, 無理なく介護を行うことができるような介護者支援システムの構築, 法基盤の整備が早急の課題である.
著者
山田 壮志郎 Soshiro Yamada
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal of social welfare, Nihon Fukushi University
巻号頁・発行日
vol.128, pp.51-65, 2013-03-31

ホームレス問題が社会的排除の一つの典型であるならば, ホームレス対策は社会的包摂を志向するものであるべきである. 本稿の目的は, ホームレス状態の解消が社会的排除の克服に結びついているかどうかを検討することにある. そのために, 筆者がホームレス状態からアパート生活に移行した人々を対象として 2009 年に実施した調査の結果を用いて, ホームレス状態解消後の被排除状況を, 先行研究の分析枠組みに依拠しながら分析した. その結果, 第 1 に, 回答者の多くはホームレス状態を解消してもなお社会的に排除された状態に置かれていることが明らかになった. 第 2 に, 被排除状況には年齢階層による相違がみられ, 若年層では生活保護受給後の孤立化が, 高齢層では居住環境の低位性が課題となっていることがうかがえた. 第 3 に, 生活保護受給者の多くが, 社会的必需項目を剥奪されていることが明らかになった.
著者
末盛 慶 Kei Suemori
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal of social welfare, Nihon Fukushi University
巻号頁・発行日
vol.128, pp.35-50, 2013-03-31

本研究では, 性別役割分担がどのように変動していくのかを明らかにすることを問題意識としながら, 夫婦間交渉に関わる測定概念─クレイム行為─を設定した. クレイム行為とは, 夫婦・パートナー間で, 自分が要望することを相手に伝える行為のことである. 本研究では, 夫婦間のクレイム行為のうち, 妻が夫に家事や育児などをするように要求するクレイム行為に注目し, こうした行為がどのような要因によって促進されるのかを計量的に明らかにすることを目的とした. 分析対象は, 1 歳~3 歳児がおり, 愛知県在住で, 父母が同居し, 雇用者であり, かつ育児休業を取得していない夫とその妻 421 組である. 分析の結果, 妻の学歴が高いほど, 妻の父親子育て優先意識が高いほど, 夫の性別役割意識が伝統的であるほど, 妻のクレイム行為が発生しやすいことが示された. 以上の結果から, 妻から夫へのクレイム行為は, 妻の学歴の高まり, ジェンダー意識の平等化, そして夫の役割分担度の低さによって促進されることが示唆された.