著者
菊間 信良 安西 睦 小川 勝 山田 幸一 稲垣 直樹 キクマ ノブヨシ Kikuma Nobuyoshi
出版者
電子情報通信学会通信ソサイエティ
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B-(0xF9C2) 通信 (0xF9C2) (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.73, no.11, pp.p786-795, 1990-11
被引用文献数
29

近年,ビル内における高速ディジタル無線通信方式の実現が強く期待されている.これにはまず現実のビル内における多重波伝搬環境の把握が必要となるが,これまで簡便かつ有効な測定法がないため,高速ディジタル通信の可能性を評価するのに十分な測定が行われていないのが現状である.そこで本論文では室内多重波伝搬構造を解明するためにMUSIC法を用いた簡便かつ高分解能な多重波到来方向推定法および多重波伝搬遅延時間推定法を提案し,その有効性を計算機シミュレーションおよび実験により確認した.多重波到来方向推定法に関してはダイポールを用いた半径 0.75から1波長程度の回転走査により10°以上離れて到来する波について正確に推定が行え,5°の場合にも若干誤差が大きくなるが2波の分離が可能であることが示された.多重波伝搬遅延時間推定法に関しては使用周波数帯域幅が100MHzの場合に,3ns以上の遅延時間差を正確に推定することができ,2nsの場合にもその推定値に多少の誤差が見られるものの2波の分離はできることが示された.また,実際に室内で測定を行った結果,10波程度の多重波が観測でき,非常に複雑な伝搬環境であることが確認された.