著者
木村 由美 中川 佑架 天賀谷 隆 Kimura Yumi Nakagawa Yuka Amagaya Takashi
出版者
獨協医科大学看護学部
雑誌
獨協医科大学看護学部紀要 = Bulletin of Dokkyo Medical University School of Nursing (ISSN:18830005)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.41-55, 2018-03-31

【目的】 本研究は,統合失調症患者の家族支援に示唆を得るための基礎的研究である.統合失調症患者の家族の体験を記した文献から家族支援についての記述を整理する,そして混乱時期における家族の体験を明らかすることを目的とする.【方法】 統合失調症患者の家族の体験について記された51 文献の結果および考察から,地域と医療施設,そして集団的と個人的からなる4分割のマトリックスで整理した.また研究対象文献から家族が患者の変調に巻き込まれる時期(以下,混乱時期とする)の体験が記述されている29文献を抽出し,体験の記述を抽出し類似性の観点から質的帰納的に分析した.【結果】 4分割のマトリックスで整理した結果,地域における家族の個別的支援について述べられた調査が十分でないことが明らかになった.また,混乱時期における統合失調症患者の家族の体験を記した文献を分析した結果,【家族の変調に対する対処困難】【スティグマが招く憂い】【家族のきずなが崩壊する危機】【発症に対する自責の念】【当事者との生活が限界に達してからの援助の希求】【資源に対する渇求】【医療介入により感じる緊張からの解放】の7つに集約された.【結論】 統合失調症患者の家族の支援は精神保健福祉分野の中で十分な研究の蓄積や体系立てたケアが確立されているとは言い難い.混乱時期における家族の体験を十分に理解し,入院の早期から家族の心理的側面および身体的側面に対するアセスメントをおこない家族の支援に繋ぐ必要がある.また本研究によって明らかにされた当事者の家族が抱える混乱時期の体験をもとに,その体験がどのように変化し意味づけられ,当事者と共に生活する上で家族にどのように影響しているのかといった体験の理解を深め,家族にとってどのような体験がパーソナル・リカバリーを促進するのかを丁寧に紐解いていくことが,必要な支援の在り方を検討するための一助になると考える.