著者
木村 由美 小嶋 章吾
出版者
ヒューマンケア研究学会
雑誌
ヒューマンケア研究学会誌 = Journal of Japanese Society of Human Caring Research (ISSN:21872813)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.39-47, 2022-12-15

本研究の目的は,わが国の2011年から2022年までの統合失調症者の家族研究の現状を明らかにし,今後の研究課題を検討することを目的とした.統合失調症者の家族研究を概観し整理した結果【統合失調症者家族の理解】【統合失調症者家族に提供される専門職による支援】【統合失調症者家族が認識しているケア継続の支え】の3つの内容に分類された.統合失調症者の家族理解の為に,質的に家族の理解を紐解く調査が多くを占め,特にネガティブな事象から支援を検討する調査が多くポジティブな事象に着目した調査は僅少であった.一方で,家族の生活を支える地域支援体制に関する調査は僅かであり,これらの調査の積み重ねが課題である.今後は,地域での専門職による家族支援の調査を蓄積していくことに加え,ポジティブな事象とネガティブな事象の両側面から統合失調症者を介護する家族の生活を捉える調査が必要である.
著者
木村 由美 中川 佑架 天賀谷 隆 Kimura Yumi Nakagawa Yuka Amagaya Takashi
出版者
獨協医科大学看護学部
雑誌
獨協医科大学看護学部紀要 = Bulletin of Dokkyo Medical University School of Nursing (ISSN:18830005)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.41-55, 2018-03-31

【目的】 本研究は,統合失調症患者の家族支援に示唆を得るための基礎的研究である.統合失調症患者の家族の体験を記した文献から家族支援についての記述を整理する,そして混乱時期における家族の体験を明らかすることを目的とする.【方法】 統合失調症患者の家族の体験について記された51 文献の結果および考察から,地域と医療施設,そして集団的と個人的からなる4分割のマトリックスで整理した.また研究対象文献から家族が患者の変調に巻き込まれる時期(以下,混乱時期とする)の体験が記述されている29文献を抽出し,体験の記述を抽出し類似性の観点から質的帰納的に分析した.【結果】 4分割のマトリックスで整理した結果,地域における家族の個別的支援について述べられた調査が十分でないことが明らかになった.また,混乱時期における統合失調症患者の家族の体験を記した文献を分析した結果,【家族の変調に対する対処困難】【スティグマが招く憂い】【家族のきずなが崩壊する危機】【発症に対する自責の念】【当事者との生活が限界に達してからの援助の希求】【資源に対する渇求】【医療介入により感じる緊張からの解放】の7つに集約された.【結論】 統合失調症患者の家族の支援は精神保健福祉分野の中で十分な研究の蓄積や体系立てたケアが確立されているとは言い難い.混乱時期における家族の体験を十分に理解し,入院の早期から家族の心理的側面および身体的側面に対するアセスメントをおこない家族の支援に繋ぐ必要がある.また本研究によって明らかにされた当事者の家族が抱える混乱時期の体験をもとに,その体験がどのように変化し意味づけられ,当事者と共に生活する上で家族にどのように影響しているのかといった体験の理解を深め,家族にとってどのような体験がパーソナル・リカバリーを促進するのかを丁寧に紐解いていくことが,必要な支援の在り方を検討するための一助になると考える.
著者
木村 由美
出版者
北海道大学大学院文学研究科北方研究教育センター
雑誌
北方人文研究 (ISSN:1882773X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.43-71, 2018-03-31

本稿では国立公文書館所蔵『引揚者在外事実調査票』を基本資料とし、戦後、樺太深海村から北海道への引揚げについて分析した。これにより、樺太南部の漁村である深海村から北海道への引揚げについて実態を明らかにし、「樺太-北海道の上陸地-最初の住所-昭和31(1956)年現在の住所」と長いスパンで引揚者の動向を分析し、職業等と関連付けて定着地への軌跡を検証した。深海村では樺太全体と比べて「公式引揚」以前の、「緊急疎開」と「脱出」で引揚げた者の割合が高かった。また引揚出発港が、「公式引揚」で使用された真岡ではなく、大泊が最多であったことも特徴といえる。北海道では引揚げの最初の上陸地である稚内、函館、枝幸に定着した者が多く、また炭鉱都市へ定着した者も多かった。引揚げから昭和31年までの間に、6割以上の世帯が転居をしていることも明らかとなった。引揚後は漁業から、農業、炭鉱、日雇、公務員への転職が見られ、無職となった者もあった。深海村の公務員の引揚げについては、個別の事例を挙げて明らかにした。公務員は優先的に「再就職」されるよう考慮されたが、全員が「再就職」できたわけではなく、郵便局員と教員は同じ職に「再就職」したが、役場吏員の「再就職」は1名だけであった。学校は、教員の「再就職」先としてだけでなく、「小使」や「学校事務員」として転職した者もみられ、引揚者の受入先としても大きな役割を果たした。
著者
佐原 菜桜 佐々木 一雅 中里 恵梨香 木村 由美子 日高 裕介 橋本 好一 酒井 利育 萩原 繁広
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.705-712, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
14

Aeromonas属の中には,染色体上にAmbler分類クラスB2に属するカルバペネマーゼ産生をコードする遺伝子を保有する株が存在する。今回,我々はカルバペネム耐性のAeromonas属の薬剤感受性検査において,自動分析装置であるVITEK2とディスク拡散法(Eテスト)の結果に乖離が生じた例を経験した。そこでAeromonas属のカルバペネム耐性株について自動分析装置の機種間差,および各種カルバペネマーゼ確認試験の検討を行った。当院において検出されたカルバペネム耐性のAeromonas hydrophilaおよびAeromonas veroniiについて,VITEK2,MicroScan WalkAway,RAISUS ANYの3機種を用いて,薬剤感受性検査を実施したところ結果に乖離を認めた。使用した装置の中でVITEK2が最もよくカルバペネム耐性を検出できた。カルバペネマーゼ確認試験を併用することで,薬剤感受性試験でカルバペネム系薬が偽感性になってしまうAeromonas属の見逃しをなくすことが可能となり,治療および院内感染対策に繋がることが考えられた。
著者
古島 早苗 尾長谷 喜久子 恒任 章 井手 愛子 木村 由美子 賀来 敬仁 前村 浩二 江石 清行 栁原 克紀
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.274-280, 2018-06-01 (Released:2018-07-11)
参考文献数
13

症例1:40代女性,4年前に他院にて二尖弁による大動脈弁狭窄症と診断され,大動脈弁置換術(CarboMedics 21 mm)が施行された.胸部違和感を自覚したため近医受診したところ,収縮期雑音を指摘され,精査目的に当院紹介となった.心エコー図所見:大動脈弁最大通過血流速度5.0 m/s,平均圧較差(MPG)58 mmHg,有効弁口面積(EOA)0.77 cm2,有効弁口面積係数(indexed EOA)0.45 cm2/m2,Doppler velocity index (DVI) 0.28,acceleration time (AT) 130 msec,弁周囲逆流(−),経胸壁・経食道エコーともに血栓弁やパンヌスを疑うような塊状エコー等は指摘できなかった.左室壁肥厚は認めず収縮良好であった.PT-INR: 2.22.X線透視所見:両弁葉ともに開放制限は認めなかった.症例2:60代女性,11年前に大動脈弁(ATS 18 mm)および僧帽弁(ATS 27 mm)置換術が施行され,経胸壁心エコー図にて経過観察を行っていた.心エコー図所見:大動脈弁最大通過血流速度3.6 m/s,MPG 36 mmHg, EOA 0.59 cm2, indexed EOA 0.42 cm2/m2, DVI 0.21, AT 122 msec,弁周囲逆流(−),経胸壁・経食道エコーともに血栓弁やパンヌスを疑うような塊状エコー等は指摘できなかった.全周性に軽度左室壁肥厚を認め,左室収縮は良好であった.PT-INR: 2.78.X線透視所見:両弁葉ともに開放の低下を認めた.両症例ともにドプラ所見から弁機能不全と診断し弁置換術が施行された.術中所見では両症例ともに弁下に輪状のパンヌス形成が認められた.まとめ:心エコー図では血栓弁やパンヌスを疑うような塊状エコーを描出できなかったが,ドプラ所見から大動脈弁位人工弁機能不全を診断し得た2症例を経験した.最大通過血流速度や平均圧較差,またAT, DVI等も考慮し,これらの指標の急激な変化や経年的な増悪があれば,人工弁機能不全を疑うことが重要であると考えられた.
著者
浅見 覚 高村 まゆみ 木村 由美子 鈴木 孝 麦島 秀雄 内倉 和雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.943-950, 1997-12-05
参考文献数
26

独自の流路系を持つカラムスイッチング高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により,レチノイン酸(RA)異性体である13-<I>cis</I>-RA,all-<I>trans</I>-RAと9-<I>cis</I>RAの相互分離を確立した.カラムスイッチングを用いることにより,カラム中に残る生体成分の洗浄が不要となり,カラム洗浄に要する時間が短縮された.又,流路中に独自の流路を加えたことにより,注入した試料を損なうことなく検出できるようになり,より良い感度と再現性が得られた.そのため,1サイクルが25分で生体成分中のRAの連続測定が可能となった.ピーク面積及び高さを用いた絶対検量線法では,共に200ngまでの間で直線の関係を示し,血中濃度を測定するのに十分な結果が得られた.又,メタノール標準試料で0.5~1.9%(<I>n</I>=10,0.26~0.37μg/ml),標準添加血清試料で0.8~2.2%(<I>n</I>=5,0.32及び0.37μg/ml)の再現性が得られた.これらのことにより,従来のRA血中濃度測定の方法よりも簡便性,操作性,再現性の向上が見られ,本法のRA血中濃度測定の有用性が示唆された.