著者
金城 尚美 翁長 志保子 与那城 美帆 Kinjo Naomi Onaga Shihoko Yonashiro Miho
出版者
琉球大学留学生センター
雑誌
留学生教育 (ISSN:13488368)
巻号頁・発行日
no.8, pp.37-53, 2011-03

本研究は,原因・理由を表す「ため」について,中級レベルの日本語学習者の使用実態を把握し,学習者の「ため」の運用上の困難点および指導上の問題点を明らかにすることを目的とする。まず中級日本語学習者の作文などから「ため」の使用頻度を調べた結果,「ため」の使用例が少ないことがわかった。次に原因・理由が含まれる文章を使ったテスト形式の調査を日本語学習者と日本人学生に実施した。その結果,日本人学生が「ため」の使用率が高い文章において,日本語学習者は「ため」の使用率が低い傾向がみられた。さらに,インタビュー調査を実施した結果,正答率の高い学習者は原因・理由を表す「ため」の使い分けを意識していることがわかった。また教科書を調べたところ,「ため」の教科書での提示の有無,提示位置や説明の仕方が学習者の「ため」の使用率の低さに影響を与えている可能性があることを示唆する結果が得られた。
著者
金城 尚美 Kinjo Naomi
出版者
琉球大学留学生センター
雑誌
留学生教育 (ISSN:13488368)
巻号頁・発行日
no.7, pp.33-47, 2010-03
被引用文献数
1

日本人または日本人学生と留学生に教育的な交流の場を提供し,参加者相互の異文化理解を促進する教育実践がさまざまな形で行われているが,その意義と効果を明らかにする実証的な研究の蓄積は少ないことが指摘されている(岩井2006)。そこで本研究では,小学校で行った6年生(32名)と留学生(13人)の交流活動の事前と事後に調査を行い,小学生の留学生に対するイメージの変化と,異文化を受容する態度の変化を調査し検証した。その結果,留学生に対するイメージの変化と異文化受容態度の変化に統計的に有意な差が現れ異文化理解を目的とした教育の効果が示された。また留学生との交流前に手紙の交換,ビデオ・レターの交換,質問交換などの事前のやり取りを通し,小学生が留学生と交流することについて感じている不安を軽減することができ,交流活動がより円滑に進められることがわかった。この結果から,交流会前のやり取りの重要性が示唆された。The purpose of this study is to investigate educational effects of an intercultural exchange program between Japanese elementary school students and university foreign students. Thirty two elementary school students participated in this exchange program. They were asked to answer questionnaires before and after the exchange activities with foreign students. The results show statistically significant differences between the pre-questionnaire and the post-questionnaire. It is found that their initial image toward foreign students has changed to higher levels and their acceptance level of different cultures became higher than before the exchange. These results indicate that an intercultural exchange program contributes to intercultural understanding.