著者
神山 孝吉 渡辺 興亜 Kokichi Kamiyama Okitsugu Watanabe
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.232-242, 1994-11

さまざまな物質が南極内陸部上空に運ばれ, 雪面上に蓄積している。内陸部の降雪・積雪の化学組成は, 大気中の内陸部への物質輸送過程と内陸部大気中の物質の存在量を反映している。いくつかの物質濃度は内陸部の降雪で増加傾向にあり, 南極内陸部は特異な堆積環境の下にあることを示唆している。なぜなら広大な雪面の続く内陸は, 物質の供給源から隔たっており, 降雪中の一部物質濃度の増加は単純には説明できないからである。本報告では, 南極氷床内陸部に堆積する降雪・積雪の化学組成についての研究を概観し, 内陸積雪の化学的性質の特異性を指摘する。すなわち積雪中のトリチウムなどに代表されるようにいくつかの物質濃度が内陸内部で増加している。南極内陸部では大気が著しい低温を示すという地域的な要因に, 成層圏を通して遠隔地域からの物質輸送過程が存在し地球規模での物質循環過程を反映するという要因が加わって, 内陸部の特異性を生みだしていると考えられる。南極内陸部の積雪の化学的特異性を考慮することによって, 雪氷コアを通して地球環境を探る研究はさらに有効になると思われる。
著者
澤柿 教伸 神山 孝吉 Takanobu Sawagaki Kokichi Kamiyama
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.258-272, 2007-11

第47次南極地域観測隊では,昭和基地に整備されたLAN及びインテルサット衛星回線を活用して,Wiki(ウィキ)とよばれるシステムを試験的に導入・運用し,基地運営における情報共有システムを構築した.観測隊では本システムの下で基地情報を整理し,各隊員が互いに協調しながら基地の運営に携わった.運用の過程で日常の業務形態に合わせてWikiのカスタマイズを繰り返し,昭和基地運営に関する情報を隊員個人個人が容易に参照し,また入力可能なように最適化を進め,最終的には国立極地研究所のローカルネットワークにも公開した.スケジュール管理,野外行動予定と実行経過の周知,通信記録の参照,リアルタイムな気象情報提供などをWiki上のWebページ上で実施するとともに,外部のWebページにリンクを貼り,第47次観測隊昭和基地の情報ポータルとして位置づけた.このような情報共有システムを用いた基地運営マネージメントが有効であると感じた隊員も多く,特に夏期に情報の流れが複雑になった時など,隊員間や基地-国内間の情報共有体系に非常に有用であることが確認できた.