著者
孫 琳 Lin Sun
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.138, pp.105-122, 2021-09-30

社会福祉という領域は,公共性と切り離せないものとして語られるが,公共性概念の内実については具体的に分析されることのないまま,今日に至っていると指摘されている。その一方で,社会福祉の歴史をみると,社会福祉における「公共性」概念は福祉サービス供給システムの変化によって変わりつつあると考えられる。本研究は福祉サービス供給システムに関わる3 つの主体(「政策主体」「実践主体」「クライエント」)に着目し,「公・公共・私の三元論」をキーワードに,公共性概念の変遷を明らかにした。すなわち,社会福祉における公共性は,戦後直後の国家に関係する公的な(official)ものという意味から,供給主体の多様化によって,共通の(common)ものという意味へ転換し,また,利用者が協働主体として重要視されるようになってから,公共性は誰に対しても開かれている(open)という意味も含まれていると考える。論文(Article)