- 著者
-
堅田 利明
KAPIL Mehta
FABIO Malava
星野 真一
仁科 博史
MALAVASI Fabio
MEHTA Kapil
櫨木 修
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 国際学術研究
- 巻号頁・発行日
- 1997
本研究では、レチノイン酸によるヒトHL-60細胞の分化で誘導され、NAD分解(NADase)活性をもつエクト型酵素のCD38について、伊国トリノ大学Malavasi博士及び米国テキサス大学Mehta博士らとの共同研究により、CD38を介する細胞内シグナル伝達機構、CD38の酵素化学的特性、及びCD38の転写制御機構などを検討し、以下の知見を得た。1、抗CD38モノクローン抗体(IgG1)でHL-60細胞を刺激すると、癌遺伝子産物p120^<c-cbl>を含む細胞内蛋白質がチロシンリン酸化され、さらにG蛋白質と共役する化学遊走因子受容体刺激を介する活性酸素産生が増強された。この活性酸素産生の増強は、CD38抗体のFc部分がFc_γII受容体を刺激して、G蛋白質を介するイノシトールリン脂質3キナーゼの活性化を増強した結果であった。2、ラットCD38を認識するポリクローナル抗体を作製して中枢組織での局在を解析した結果、CD38はアストロ細胞に強く発現していた。さらに共焦点レーザー顕微鏡を用いた観察から、細胞表層のCD38は酵素反応の進行にともない何らかの化学修飾を受けて不活性化されることが明らかにされた。3、CD38の反応産物のADP-riboseは、老化への関与が指摘されている翻訳御修飾であるadvanced glycation end products(AGE)化のよい供与体となることが示された。4、糖鎖修飾を受けたCD38と結合する50-kDaタンパク質をリンパ組織に同定し、CD38のNADase活性がレクチンとの結合により阻害されることを見出した。5、ヒトCD38遺伝子の遺伝子発現について解析し、核内レチノイン酸受容体のRAR(α)/RXRが結合する応答配列が第1イントロン上に存在することを見出した。