著者
中島 秀人 MORENO-PENARANDA Raquel MORENO-PENARANDA Raqouel
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

世界中の都市で人口が急増し、都市の面積が拡大している。都市外の生物多様性は犠牲となり、生物多様性の喪失や温室効果ガスの排出など、地球環境問題を悪化させている。食物を供給し、洪水やヒートアイランド効果を抑え、地域の福利に不可欠な物資やサービスを提供する、生態系の能力は見落とされている。近年になってようやく、ローカルおよびグローバルな観点から、地域の食システムを(再)構築する都市農業の潜在性が注目されるようになった。当研究は、日本の都市農業が持続性や福利にどの程度貢献しているかを検証し、また、都市農業と林業・漁業の繋がり、さらにはこれに対する地域、国、国際的ガバナンスの影響を検証した。日本は、都市圏で国内農業生産の1/4以上を供給する高度先進国であり、グローバルな持続可能性に貢献すると同時に、地域の農業の生態学的、社会経済的恩恵を得ている珍しい事例である。この研究では、持続可能な自然資源管理について、フィールド調査を中心として分析を加え、社会や生態系に関する学際的な理解を深めた。具体的には、生態系サービスと生物多様性を高める都市農業の生態系上の役割を調査し、それが都市のエコロジカルフットプリントをどの程度軽減するかを分析した。以上のコアプロジェクトに加えて、インドネシアにおけるバイオ燃料作物の持続可能性の研究、日本では、石川県金沢市の生物多様性について広範囲な調査を行い、沖縄では、沿岸地域の暮らしの影響評価にも関わった。具体的には、石油流出による沖縄の生物影響評価を利害関係者の認識の観点から調査し、インドネシアでは、パーム油拡大による生態学的、社会経済的影響についてのフィールド調査を実施した。