著者
守屋 三千代 MORIYA Michiyo
出版者
創価大学日本語日本文学会
雑誌
日本語日本文学 = Studies in Japanese Language and Japanese Literature
巻号頁・発行日
no.30, pp.1-10, 2020-03-18

本稿は『星の王子さま』の和訳に現れた動詞「ナル」の意味・用法を分類し、英訳と対照するものである。原文がフランス語である『星の王子さま』を選んだのは、この原文および翻訳が筆者の主催する「ナル表現研究会」で行う通言語的研究の共通テキストであることに拠る。本稿で採用した『星の王子さま』では全50 例ほどの「ナル」を伴う用例が得られ、その英訳は変化表現・未来・状態表現・スル的表現、および義務表現に分かれる。このうち変化動詞があまり用いられない傾向と、未来形とスル的表現で訳される傾向が観察された。このことは日本語で時間幅をもってアナログ的に捉えられた事態が、英語では静的かつデジタル的に捉えられる傾向を示唆する。